第6章 私の初任務とあの人の存在
「ひっ……ひっ……」
無理!無理無理無理!!!私は必死で走り回った。カルバドスは開始早々、ナイフを使って私を仕留めようとしてきたのだ。私はそれを命懸けで避け、そして逃げるを繰り返していた。
「カルバドス! カルバドス! 無理! ほんと無理!! 私、ナイフまだ習ってない!!ほんとに! 習ってないから!!」
「……………」
せめて何か言ってえぇぇ!!!カルバドスは、完全にベルモットに相手してもらえなかったイラつきを私に八つ当たりしている。私はカルバドスの迫ってくるナイフを避けながら、距離を取った。
「なずな。逃げてばかりじゃ、訓練にならないわよ」
お姉さんが優雅に足を組みながら私に声をかける。隣にはバーボンがこちらを鋭い目で見ている。………助けは期待できそうにない。
「…っ!?」
突然現れたナイフが頬を掠め、私は慌てて逃げようとした。だが、ふと、頭の中に声が浮かぶ。
「逃げるなとは言わん。お前は女で子供だ。力ではどうしようもないこともある。だが、諦めることだけはするな。紬、生きることに執着しろ」
………あぁ……だから、私は生きようと思ったんだっけ。絶望した目で、あのゴミ溜めを生きていた私が、あの不器用人の言葉で。
「生きるよ…生きてやる……生きてあんたのその顔ぶん殴って……絶対に幸せになってやる……」
私は2、3度息を吐き、そして覚悟を決めた。