第5章 黒の組織の重要人物
しかし、私の考えは外れることとなる。
「…一体なんの御用ですか?ドアを壊して、いきなり入ってくるだなんて…あなたには常識というものが…ちょっと!!!」
バーボンの口ぶりから、どうやら相手は知り合いのようだ。私はホッとして、ベッドに横になった。…そう言えば、ジン明日まで任務か。置き手紙意味なかった…な…
「えっ!?!? ジン!?!?」
見覚えのある黒色のコートに、私は思わずガバッと起き上がった。ジンは機嫌が最高に悪そうな顔でそこに立っている。その手には愛用の銃が。
「………………………何してやがる」
ギロっとこちらを睨みつけながら大股で近づいて来るジン。ジンとの距離が手が届くくらいになったとき、私は首根っこを掴まれた。
「ジン! 一体何なんですか! その子は今日ここに泊まりたいと……」
「……邪魔したな」
バーボンに銃を向けて黙らせたあと、ジンは何事も無かったように私を連れて部屋を出て行った。私は心の中でバーボンに謝りながら、何も言わずジンに運ばれるがまま。
「……ジンって、私のこと安眠グッズか何かだと思ってる?」
「あ?」
「………なんでもない」
ジンの部屋に戻ると、恒例のようにジンは私をポイっと投げ捨て、着ていたコートや帽子も床に脱ぎ捨てた。その目はほとんど開いていない。
「……ジン、ハンガーくらいかけたら?」
「………うるせぇ」
思った通り、ジンはただ眠いだけのようだった。私の上に覆いかぶさるようにベッドに横たわり、そして目を完全に閉じようとした。私はジンの顔を押し出し、それを止めた。
「…何しやがる?」
ジンは充血した目でギロりと私を見る。だが、私も譲れなかった。
「ジン、香水臭い。お風呂入ってきて」
「あ?」
絶対無視される…。そう思ったが、ジンは軽く舌打ちをして、バスルームへと向かった。
「……まじか…」
ジンの姿が見えなくなり、シャワーの音が聞こえても、私はそちらをずっと見ていた。普段ジンはお酒や煙草の匂い、たまに血の匂いもするのだが、私は別段気にしたことは無かった。でも、今回ばかりは違う。女性の甘ったるい香水の匂いが鼻についたからだ。恐らく、彼はハニートラップかなんかで女性を相手してきたのだろう。
「………そういえば、前も遅いのに帰ってきたっけ?」
案外、彼は環境が変わると寝れないタイプの人間のようだ。