第5章 黒の組織の重要人物
上がってきたジンはびしょ濡れのままあがってきた。おぼつかない足で、ベッドに座る。
「拭け」
私は思わずわらってしまった。まるで最初に会った時のようだ。私はタオルを手に取り、彼の体を吹き始めた。
「ジン、せめて最低限体を吹いて……お?」
気がつけば私はベッドの上で横になっていた。顔を上げると目の前にはジンの顔が。……今日は皆顔が近いなぁ。私は思わず苦笑してしまった。ジンが口を開いた。
「やけに、バーボンに媚を売っているようだが…何を考えてやがる?」
心臓がドキリと高鳴る音がしたが、私はそれを顔には出さず笑みを浮かべた。
「なんの話し? 私はバーボンにまた外に連れて行って欲しいなって思ってるだけだよ?」
ジンもウォッカも連れて行ってはくれないでしょ?と言うと、彼は笑った。……声を出して笑う姿…初めて見たけど結構怖い。
「相変わらず、食えねぇガキだなてめぇは」
「私はただの子供だよ。それであなたの使い勝手のいい駒」
にこーっと笑い、ジンの濡れた髪に触る。
「だからこうやって、体も拭くし、ジンの安眠グッズにもなってるんでしょ?」
私役に立ってるでしょ?と言うと、ジンはさらに高笑いをした。……今日は機嫌がいい日だなぁ。
「そうだ、お前は俺のものだ。お前が誰に媚を売ろうが知ったことじゃねぇが、夜はここに帰ってこい。覚えておけ。俺の駒が、勝手なことするんじゃねぇ」
私はその言葉にニコッと笑い、彼の首に手を回し、抱きしめた。
「了解。ジン」
……ここまで執着されるとは思っていなかった…。今日は計算外なことばかり起こる。そうぼんやり考えながら、私は再び彼の髪を拭くために起き上がるのだった。