第5章 黒の組織の重要人物
「お風呂上がったよ!まま!」
バタバタと髪を拭くのもままらない状態で、私はバーボンに抱きついた。バーボンは触っていた携帯を置くと、バスタオルで私を包み込んだ。
「こら。ちゃんと拭きなさい」
何だかんだ言っても、彼は面倒見がいいようだ。私の髪を吹き、そしてドライヤーで乾かしてくれるところまでしてくれる。
「全く。それでよく今までジンの身の回りのことが出来てましたね」
出来るよ?だって今猫かぶってるだけだし。だけど、私はニコニコして、聞こえないふりをした。バーボンは私の髪を優しく梳きながら、
「せっかく綺麗な髪をお持ちなんですから」
と言った。……なるほど。そう言えば、彼はハニートラップの担当もしてるんだったか。確かに女性の扱いは慣れてそうだ。私は彼にもたれかかり、不思議そうにのぞき込む彼の髪に触った。
「えー?私はままみたいな髪が良かった。だって、ままの髪、お日様に当たるとキラキラ光って綺麗なんだもん」
すると、びっくりしたように目を大きく開くバーボン。まさか、自分より二回りも違う子に口説かれるとは思っていなかったようだ。私はふふっと笑った。この台詞は、あのクソ親父の受け売りだった。こっそり聞き耳を立ててたあの頃を思い出す。
「ふふっ。男の僕にそのような言葉は勿体無いですけどね。ありがとうございます」
すると、バーボンは楽しそうに笑い、私の頭にポンと手を置いた。
「はい。終わりましたよ」
「ありがとう!まま」
にこーっと笑い、私は水を飲もうと冷蔵庫へ向かった。後ろでは、バーボンがため息をついているのが分かった。