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赤井さんちの一人娘

第5章 黒の組織の重要人物


~誰かside~

「……バーボン?」

ハッと俺が顔を上げると、目の前には心配そうに俺を見るなずなの顔があった。…駄目だな。この少女の前だと、どうしても感傷的になってしまう。俺は笑った。

「すみません。流石に疲れてしまったようです」

だから今日は部屋に戻って……。しかし、俺がそこまで言う前に彼女は目を輝かせた。

「分かった!! ちょっとこれ飲んで待ってて!!」

そして、何故か台所へ向かう彼女。俺はポカンとしながら、手渡された飲み物をみた。………毒を持っている様子はなかった…。…………駄目だな。思わず笑みが浮かぶ。保護すべき人間までも俺は疑うのか…。あの二人の娘である彼女を疑うのか…。疑うことが染み付いてしまった自分に自嘲的な笑いが出る。1口飲むと、ホッとする味が舌を包んだ。………少し甘いミルクだった。

「美味しい? 疲れた時、甘いものがいいと思って」

彼女がお盆を持って、机に置いた。そこには、ご飯と味噌汁、そして肉じゃがだった。出来たてを思わせる湯気が上へと登っていき、その漂う匂いが俺の腹を誘惑する。

「どうぞ、召し上がれ!! 作り置きで悪いけど」

いつの間に持ってきたのだろう?俺は不思議に思いながら、彼女をみた。すると、彼女は悪戯っぽく肘をついた。

「毒味してあげよっか?」

そして、パクっとじゃがいもを食べた。俺は内心ドキリとしていた。…まるで俺の心が読まれたように……彼女は言ったから。

「ん!! ぐーだよぐー!! ほら、ままも食べて!!はいあーん!!」

こちらに肉じゃがを差し出す彼女に、少し戸惑いながら俺はパクっと食べた。…噛む事に染みたじゃがいもが口の中に広がり、そしてそれはなんだか懐かしい気がした。……いつぶりだ?人に飯を作ってもらうのは…

「美味しい?」

「…ええ。なずなちゃんは料理もお上手なんですね」

褒めると上機嫌で笑う彼女。俺は本当に勘弁して欲しかった。……俺は今までどうやって、他人を利用してきたんだっけな…
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