第5章 黒の組織の重要人物
「あの、先程はごめんなさい。私、昨日その…眠れなくて…」
私は先程からニコリと微笑む彼にお辞儀をした。正直に言って、ここに長居をするつもりはなかった。見知らぬ彼と二人きりで、警戒しない方が不思議だ。 すると、彼はふふっと笑った。綺麗な金髪がふわっと顔にかかり、綺麗な顔立ちが浮き彫りになる。…この人は容姿もいいのか。私はポカンっとそれを眺めた。
「あぁ、すみません。中々気づかれないものだな…と思いまして」
私は首を傾げた。気づかれない?私は何かされたのだろうか?しかし、この人の次の言葉で私はハッとした。
「まさかこんなに早くお目にかかれるとは思いもしませんでした。七種なずなさん。昨日のお電話ぶり…でしょうか??」
「……………あ!!??」
私は思わず指を指してしまい、慌ててそれを引っ込めた。口調はまるで違うが、確かに言われてみれば昨日の保護措置の人の声な気がする。…全然気づかなかった。
「はじめまして。バーボンこと安室透と申します。」
確かに昨日の今日で、まさか本人に会えるとは思わなかった。私はぺこりとお辞儀をした。
「あ、はじめまして。私は七種………ってご存知でしたね」
「そうですね。……では、少し場所を変えましょうか?」
私は頷き、思わず差し出された手を取った。 なんだか、バーボンの手は少し冷たかった。