第5章 黒の組織の重要人物
「…………」
「…………」
やばい!!やばやばやばい!!人生最大のピンチ!!!あれだけ言われてたのに、結局寝過ごして顔合わせもままならなかった!!私が起きたのは、お昼すぎた頃。殺気だっているジンの膝で私は目が覚めたわけで………もう、最悪の目覚めでした。
「あ? そのまま永遠の眠りにしてやろうか?」
「ひっ! ごめんなさい!!!」
「あ、アニキ……」
あのウォッカでさえビビってるこのジンの顔。私は思わず床に正座の姿勢。
「………………………………………………」
「ひっ」
ちらりと顔を上げると、今まで見たことのない顔で睨まれ、私は慌てて床に目線を戻す。
「そ、その…」
私はこの状況にどう収拾をつけたらよいか頭をフルで働かせた。……しかし、考えれば考えるほど、死亡フラグでしかない。再び、ジンの様子をちらりと見た。
「……………ひっ!!」
よっぽど大事な会談だったのか、不機嫌度具合がMAXのジン。私は歯がガチガチと音がするほど、自分が震えているのが分かった。
「………おい」
ふと、先程から圧を送ってきていたジンが口を開いた。私は反射的に顔を上げた。すると………なんと、拳銃を取り出していた。ひぇ……。ダメだ…私死んだ…。もうこの際、悪魔でもなんでもいい!!なんとかして欲しい!!
「……何の用だバーボン」
私は急に見知らぬ名が出てきたことに首をかしげた。ちらりとジンを見ると、ジンの銃は1人の男に向いていた。
「何って、その子に用があるんですよ。元々、その子との顔合わせの予定だったんでしょう?そんな物騒なもの向けないで欲しいですね」
男の人は軽く両手を上げ、そして私に微笑んだ。……バーボン。噂で聞いたことある。確か腕のいい探り屋で、組織入りして異例の速さでここまで上り詰めた期待の新人。どんな屈強な兵士なのかと思ったが…。彼の線の細そうな見た目からしてあまり想像ができない。
「……ちっ」
ジンはギロッと私を睨みつけ、そして不機嫌そうに部屋を出ていく。私は彼が去ったあと、扉が閉まる音がしてようやく体の力が抜けたのだった。