第5章 黒の組織の重要人物
~誰かside~
ようやく乗り込んだ車の中で、すやすやとアニキの膝の上で眠るなずな。俺はアニキになずなとの関係をすごく聞きたかったが、まずは目的地に行くことが先だと、車を急がせた。
「……………幹部ともあろうお方が遅刻ですか?」
ようやく到着したのは、約束の時間より1時間後だった。アニキは煙草を咥え、悠々と現れた。
「…近頃、ネズミが多くてなぁ。てめぇらがそうじゃねぇとも限らねぇ」
アニキの言葉で表情が固まる3人。……まさか寝坊だとは死んでも言えねぇ。
「…心外ですね。まさかあなたにNOCだと疑われる日が来るなんて」
コードネーム、バーボン。主に探り屋としてボスに腕を買われた期待の新人の1人。その饒舌な口調とブロンドの容姿はどこかあの女狐を思い出させる。……………アニキが嫌いなタイプだ。
「まぁまぁ。そう言うなよバーボン。ジンも忙しい身なんだ。遅刻くらいいいじゃねか」
コードネーム、スコッチ。こいつもバーボン同じ時期にあの方に能力を買われた。バーボンほど目立った噂はないものの、主にサポートでは並ならぬ才能を発揮する。
「……用件はなんだ?」
最後にコードネーム、ライ。冷静沈着で頭も切れる、またスナイパーとしての腕もたつ。……最も期待されている新人だ。ふと、俺の背中でモゾっとなずなが身動いた。…起きたか?しかし、再びすぅっと寝息を立てた。………数年一緒にいて、初めて見たな。普段しっかりしている分、なずなのガキらしい一面を見てなんだかホッとする。…この寝顔から、幹部候補に上がっている1人だと誰も思わねぇだろうな。
「…言うことは2つだ。ひとつ。これから、お前らと合同の任務につくことが多くなる。俺の足を引っ張る真似したら容赦なく殺す。俺はなれ合いをするつもりはねぇ」
「同感だ」
ライはフンッと鼻を鳴らした。そして、チラリとこちらに目線を向けた。……まぁ、そりゃあ気にはなるだろうな。
「……それより、なんでここにガキがいる?」
「…このガキが2つ目だ」
俺の言葉に眉を顰めるライ。
「そのガキはただの雑用係だ。盗み、死体処理、偵察、何でもやる。おめぇらも好きに使うんだな」
俺の背で寝ているこいつはまだ起きる気配さえなかった。