第5章 黒の組織の重要人物
「てめぇ…どこ行ってやがった」
部屋に戻ると、不機嫌なジンが不機嫌そうに足を組み、そしてさらに機嫌が悪そうに酒と煙草を口にしていた。…………まさか…帰ってきてるとは…。今日は確か、ジンが大事な用があるとかで、てっきりホテルかどこかに泊まってくるとばかり……
「ちょっとお散歩」
「こんな夜中にか?」
「うん!中々寝付けなくて」
ほら、ひとりで寝ることって中々ないじゃない?そういう私に、ジンは舌打ちをひとつした。……………顔にこそ出さないが、めっちゃジンの顔が怖い。この場にはウォッカがいないから、これを私が対処できるとは思えなかった。
「…………妙な真似したら殺すぞ」
「分かってるよ」
私は床に転がってる空き瓶を片付けようと手を伸ばしかけ………
「ん?」
そして、その手をジンが掴んだ。気づけば私はベッドの上にいた。ジンが私の体を掴んでいるから、身動ぎもできない。心做しか、ジンの体がいつもより温かいことに気づいた。
「え、なに?ジン、眠いの?」
「………うるせぇ」
……………ただ眠いだけだった。私は無駄な冷や汗をかいたってことか。ふぅと大きく息を吐いた。
「おめぇも寝ろ。明日顔合わせがあるからな。居眠りなんざしやがったら殺すぞ」
…顔合わせ?何の?でもそれを聞く前に、ジンはすぅと眠ってしまった。
「おやすみなさいジン」
私は返事は期待してないが、いつものように挨拶をし、目を閉じた。すると、
「うるせぇ。寝ろって言ってんだろなずな」
ぼそっと聞こえ、私は思わず飛び起きそうになった。え、なに?今なんて言った?私の名前を呼んだ?え、え、え!?ちらっと見ると、ジンは寝息をたてて、夢の中。
「もー、やめてよぉ…」
初めてのジンのデレに寝れそうになかった。