第5章 黒の組織の重要人物
最近、任務が本当に多い。私はげんなりしながらそう思った。これじゃあ、せっかく手に入れたこれを使える時間もありゃしない。
「………はぁ……」
私はやっぱりいつも通り屋根の上で深ーくため息をついた。自分の部屋を持たない私にとって、ここが唯一安らげる場所だった。
「…………いい天気だなぁ」
時間はない。何故なら、もうすでに下でウォッカが私を探してうろうろしている。そろそろ大声で私を呼ぶだろう。
「…………名前…考えようかな…」
最近、不便だと思ったこと。私は呼ばれる名前が無い。ガキやら、おいやらで会話が完成してしまうのだ。もう私の名前はないのも同然。まぁ、本名なんて言えないしなぁ…………あ。
「おい!!ガキ!!!どこに行きやがった!!!」
ウォッカが少しあわあわしながら、私を探す。…………私のことを呼ぶ名前が出来たら、1番助かるのウォッカだと思う。
「どーーん!!!!」
「うおっ!?!?」
私は肩で息をするウォッカを後から突撃した。まぁ、でも流石幹部。ビクともしなかった。
「おまっ!? 今までどこにいやがっ………」
「なずな!!」
私は満面の笑みを浮かべた。ウォッカがキョトンとした顔で私を見た。
「私の名前!ないと不便でしょ?ウォッカが!!」
「俺かよ!!」
だけど、ウォッカは私の頭を力強くわしゃわしゃとした。なんだか、その顔は嬉しそうだった。