第5章 黒の組織の重要人物
「で、今回もFBIがいたのか?」
私は今やばい状況だということに気づいたのは、車に乗って早々ジンに銃口を向けられたとき。
「…てめぇまさか目つけられてんじゃねぇだろうな?」
いつもと違うのは助手席に見知らぬ誰かが座っているということと、いつものジンの愛車とは違う車に乗ってること。
「おいおい、ジン。そんな小さい子に向けるものじゃないだろ」
助手席の男が茶化すようにジンに言った。その言葉で、私はこの人が多分幹部候補の1人だと気づき、口を開いた。
「目を付けられてるかは分かんないけど、もう目星は付いてるんでしょ? 」
「……ハッ!食えねぇガキだ」
そして、ジンは銃口を男に変えた。男は驚き、そして戸惑った。
「てめぇだろ。FBIに情報を売ったのは」
「ま、待てよ。なんで俺がこいつのそんな情報を売るんだ?」
ジンがチラリとこちらを見る。……私がいえと?私はため息をつきそうになりながら口を開いた。
「自分が幹部になるために私が邪魔だった。自分が"コレ"だって情報を私が盗む恐れがあったから」
私は窓を軽く2回叩いた。私も最近知ったんだけど、組織への潜入捜査というものがあり、それを通称「NOC」というらしい。全部ベルモットのお姉さんの受け売り。
「俺がNOCだっていうのか? 俺が今まで組織にどう貢献してきたか知らないわけじゃないだろ?」
知らないし、興味もないや。私はひとつ欠伸をした。
「私を消して、その後釜に仲間を推薦するつもりだった。そうすれば、盗んだ情報なんて楽に操作できるから。仲間は多分2人はいる」
私の言葉に空いた口が閉じない男。私はその分かりやすさから、よく今までバレなかったなぁとまたひとつ欠伸をした。
「誰だ」
「一人は、推薦されている中に入ってる。もう片方は別の人の部下。多分、狙撃手」
「…根拠は?」
「匂い。私、この人のことは知らないけど、この人と同じ匂いの人を知ってる。Shalimar…愛の香水。ベルモットのお姉さんが、愛なんて甘ったるくて使えたもんじゃないって」
「ま…待て。香水なんて任務でついただけだろ?それだけで……俺をNOCだって……」
その言葉は最後まで聞くことは無かった。車の中に消炎の匂いが立ち込める。
「既に女の方が吐いたぜ」
私はその容赦のなさに、今更ながら、ジンの恐ろしさを実感するのだった。