第5章 黒の組織の重要人物
~別サイド FBI~
「………対象者を見失いました…」
無線機から聞こえてくる報告に私は大きなため息をついた。
「………速やかに退避しろ」
そう言うと私は無線機を置いた。これでもう何度目の負けか分からない。私は椅子に力なくもたれかかった。
「また逃げられたんですか?例の子供に」
私は彼女の問いに頷いた。彼女は短く切ったブロンドの髪を軽く揺らした。
「全くシュウのやつ、面倒な子を育ててくれたものね」
私もその言葉に同意したかったが、苦笑いするだけにしておいた。あの見事なまでに我々から逃げきる姿は、小さい赤井くんを見ているようだった。
「あの子…名前はツムギって言いましたよね。名前を呼んであげたら、あの子も私たちのこと味方だと思うんじゃないかしら?」
私はその言葉に首を振った。我々が追う組織はそんなに甘くはないと。
「報告によると、あの子には必ず見張りが付いているそうだ。はるか高台からね。任務に失敗したと判断されたら、遠くからあの子の頭は吹っ飛ばされるだろう」
だからこそ、なるべく室内で保護しようとしたのだが…と私は再びため息をついた。
「…………あんな小さい子にそこまで求めるような組織なの?」
ジュディくんの声は少し震えていた。私も同じ気持ちだよ。だからこそ、彼女を早く保護してやらなくては。………元はと言えば、私が招いたことだ。
「彼女の保護は優先事項だ。赤井くんにもそう伝えてある」
「……シュウはなんと?」
彼女の問いに私は最もな質問だと思った。だが、その問いには答えることはしなかった。彼は言ったのだ。ゾッとするような声で。
「…もしもの時は、俺が始末をつける」
と。