第15章 黒の組織とFBIと・・・私とジンとクソ親父
「元自衛隊幹部の土門康輝…この人が殺しの対象?」
私は心がここに在らずなウォッカの代わりにそう聞いた。目の前の書類には対象の顔、家族、経歴など書いてあった。……ふーん…この人活動が組織に目をつけられたのか…。
「…でも、1人の対象に対して、幹部6人は流石にやりすぎじゃないの? ジン、ウォッカ、ベルモットのお姉さん、さらにキャンティ、コルン…それで私でしょ?」
と言うか、そこまで主力メンバーが勢揃いしているなら、私は要らないような気がする。すると、ジンがじろりと見る。
「確実に殺れと仰せだ。てめぇ如きが任務に口を出すんじゃねぇよ。てめぇはただ命令に従っていればいいんだ」
ジンの言葉にえーと不服を漏らすが、まぁこれもいつものこと。私は書類に目を戻した。
「それだけ確実に殺れってことね。失敗した場合の構成まで考えてあるし」
まぁ、これはジンが考えた編成なんだろうけど。私は膝の上から降り、まだ私の足首を見ているウォッカへと行こうとした。しかし、ジンから首根っこを捕まれ、元に戻される。……普段なら別に私がどこにいようと関係ないのに…
「……ジン、何かあった?」
相変わらず書類に目を向けているジンに、私は恐る恐る尋ねる。すると、こちらを鋭い目で見るジン。
「何わけがわからねぇこと言ってやがる。殺すぞ」
「……やっぱりなんでもない」
ジンの様子がおかしい。それは数日前…この部屋で足枷をつけられたときからずっと思っていたことだ。だが、何を聞いてもジンはこの調子。私は諦めて、ジンの好きなようにさせている。だけど…そろそろ、うちの人達が黙っていない。頭の中に過ぎるのは、バーボンとスコッチ…そして、最近私のところに入り浸っているカルバドスの姿。一応ジンの目を盗んでフォローは入れているが……時間の問題だろう。
「………決行日は後日伝える。話は以上だ」
いつもなら私もこの言葉で部屋を出るのだが……この時は違った。ジンはウォッカは半ば強引に外へと出したが、私は相変わらずジンの膝の上のまま。……こりゃ、ベルモットのお姉さんから何か言われたな。