第14章 季節外れのハロウィンパーティーは悪夢からの良心
~誰かside~
「ベルモットのお姉さん」
あのお方に返信を送ってすぐ、車のエンジン音が近くで止まったかと思うと、明るい声が外から聞こえた。
「迎えに来たよ」
私は車から顔を出して笑う少女の車に乗り込んだ。運転していたのはスコッチ。そして、驚くことに死んだと思っていたカルバドスは、少女の膝で寝息をたてていた。
「………あら。てっきり死んだかと思ってたわ」
腹部の痛みを誤魔化すために、私は彼女にそう言った。彼女は微笑み、そっとカルバドスの顔を撫でた。
「うん。死のうとしてたところを回収してきたの。お姉さんは見殺しにするって分かってたから」
少し棘のある言い方に私は思わず笑ってしまう。
「思わぬ敵がいたのよ。あなたも知っているでしょう?シルバーブレットよ」
「赤井秀一…だっけ? ダメだよお姉さん」
ぴたっとカルバドスを撫でる手が止まる。私はそれを見て、少し羨ましいと思った。その小さな手で優しい手つきで自分も撫でて欲しい…自分らしからぬ思いが頭を過ぎってしまったのもきっとこの怪我のせいだろう。
「駄目? 何が駄目なの?」
私がそう尋ねると、黒い瞳が私の方を向く。相変わらず、その目には光が点っており、相変わらず自分を惹き付ける。桃色の唇が動く。
「彼はジンの宿敵(恋人)だよ。愛しい愛しい宿敵。彼を奪ったら、ジン怒っちゃうよベルモットのお姉さん」
そして相変わらず、彼女はジンのことばかりだ。この子のこのようなところが、ジンのお気に入りの所以だろう。
「それは悪かったわ。私もまさか彼が現れるなんて思っても見なかったもの」