第12章 新たな転校生は波乱の幕開け
しばらく考えていると、どうやらバスジャック犯の要求は無事に通ったらしい。バスジャック犯はスキー板を通路に置きだした。何故スキー板を…と首を捻ったところで、そう言えば、この宝石強盗グループは爆弾も作っていたな…と嫌な考えが過ぎった。その途端、視界の端に危険が映った。
「………っ!!」
だが、咄嗟にそれをクソ親父から止められる。私が動揺した理由は、言わずもがなコナンだ。彼が懲りずにまたコソコソと調べようとしており、バスジャック犯はそんな彼に近づいていった。バスジャック犯はニヤニヤ笑いながら、拳銃を彼に向ける。
「またお前か…お前が先に死ぬか?」
確かその拳銃は、女性が安全装置を掛けたもの…。しかし、使えないと分かれば、男の今までの行動から考えるに何をするか分からない。
「お、お兄さ…!!」
拳銃は何も撃つだけが取り柄ではない。あの硬い鉄の塊で、頭を殴っただけでも大きな致命傷になりうる。男がコナンに向かって引き金を引こうと手にかけ、私は飛び出そうとした…
「な…!!」
しかし、先程よりも凄い力で、クソ親父が腕を掴んできた。目線を向ければ、小さく首を振る。その目は止めろと言っているようだった。こうしている間にもコナンの身が危ない。私は体に力を込めるが、大の大人に…しかもクソ親父に私の力が適うはずも無い。再度小さく首を振るクソ親父に、私はかっとなった。なんで…なんでこれ以上あんたに奪われ続けないといけないんだ…!!
「やめてください!子供の悪戯じゃないですか!」
私がクソ親父を肘で殴りつけた音は、男性の叫び声でかき消された。クソ親父が私を見る…マスクがズレて口元に血が滲んでいる。だが、クソ親父の力は弱まることなく私を掴んだまま。力で押さえつけてまで…お前は私から奪わないと気が済まないのか…!! 私はそういう思いからクソ親父を睨みつける。
だが、私のこんな考えが自意識過剰なくらい分かっていた。クソ親父は私なんて興味が無い。組織を壊滅させたいクソ親父にとって、私がただのジンのそばにいる情報屋程度の存在なのだ。だけど…だからこそ…私はもうクソ親父に縛られたくない。
新出先生と呼ばれた男性がコナンを庇う。コナンたちに危険が及ばないと分かれば、私が反抗する意味もなくなる。私の思考が読めるように突然無くなった拘束だったが、私は変わらずクソ親父を睨み続けていた。