第12章 新たな転校生は波乱の幕開け
…隙間から…彼はイヤフォンを取り出しているのが分かった。私は内心ヒヤヒヤしながら、彼を見つめる。彼がじっとしていられない性格なのは知っていたが…何も…そんな危険を起こすことは無いだろう…!一応、犯人たちの死角で動いているようだが…私はヒヤリとする思いを抑え、彼から視線を逸らした。あまり見続けていると、私の視線から彼が不審な動きを見せていると知られてしまうからだ。頼む…バレないでくれ…。だが、私の祈りも虚しく、バスジャック犯がコナンを通路に叩きつけた。
「何やってんだ⁉︎この餓鬼が!」
どうやらあのイヤフォンは通信機だったらしく、それはバスジャック犯に取り上げられてしまう。取り上げられる際、コナンが悔しそうな顔をしているのが見えた。
「……何故…?」
私は思わずクソ親父の向こう側の人達を見る。コナンはバスジャック犯の死角で動いていた筈なのに直ぐバレた。バレた理由は…死角じゃないところにいた仲間が教えた以外に考えられない。座席を全体的に見渡せるのは、私たちが座っているこの後部座席…。ちらっと後部座席を見るコナンと目が合った。彼も気がついている…バスジャック犯の仲間が、私も座っている後部座席にいることに。
「……………返す」
私は咄嗟に動きやすいように、クソ親父の膝の上にガウンを置いた。…取り敢えず、今までの出来事で分かったこと。それは、コナンはどんなに危険な状況でも、他人に任せることをせず自分で動いてしまうということ。そして、彼の横顔から察するに、彼もまた私と同じように誰がバスジャック犯の仲間か思案しているに違いない。
消去法で考えると、まず隣のクソ親父は違う。そうなると…残りはクソ親父の隣の男性と、ガムを噛む音が煩い女性のどちらかだが…
まぁ、2択でいくならガム女が1番怪しい。こんな緊迫な状況で、普通ガムなんて噛んでいられないだろうから。それなのにガムを噛み続けているだけでなく、膨らませてまでいる。怪しい…怪しすぎる…。だがここで下手に動き、犯人を刺激するような真似はあってはならない。さて…どうする…。