第12章 新たな転校生は波乱の幕開け
「…ん?」
と、ここで私はあることに気づく。私の肩に明らかに大人サイズのガウンがかけられていたのだ。………誰のだこれ…まさかクソ親父じゃないだろうな…。そう思い、チラリと様子を伺おうとした時…再度発砲の音が聞こえた。しかも今度は先程よりも近距離で。
「………?」
だが、私はその発砲音よりも私に覆い被さる影に、体が固まってしまった。その影は…クソ親父は…目の前の発砲から私を遠ざけるように見えた。そして、私に頭からガウンを被せ、その体を離す。一瞬…二人ですごしたあの小屋が頭を過り、私は思わずその手を取った。
「お、おと…」
だが、その彼の2つの瞳がこちらに向いた瞬間…私は我に返った。慌ててクソ親父の手を離し、顔を隠す。自分の行動が訳が分からなかった。なんだ…何を言いかけた…一体…何を期待したのか…? この男に期待した結果、私はこのような有様になってしまったことを忘れたのか。私はぎゅっと拳を握り、恐る恐る頭をあげる。クソ親父は私を見ておらず、その2つの瞳はバスジャック犯へと向けられていた。それにほっとし、私もまたバスジャック犯の様子を伺うのだ。無意識に被せられた大きなガウンを握りしめながら…。
「Oh sorry‼︎」
派手に転ぶ男に、FBIの女性がそう叫んだ。どうやら、組んでいた足に引っかかってしまったよう。…いや、あの様子だとわざと転ばせたようだ。ワナワナと震える男が拳銃を取り出す。
「こ、この外人女…」
すると、女性は英語でまくし立て、バスジャック犯はタジタジになる。…なるほど上手い手だと私は彼女のやり口に思わず頷いてしまう。さすがFBIということか…異国の地というハンディキャップはあれど、その対人スキルには舌を巻かずにはいられない。先程まで殺気に溢れていた彼も、異国語で離す女性は苦手のようだった。その隙に拳銃の安全装置を掛けたのを見届ける。…お見事。意表を突く鮮やかなやり方は、どうやら女性の方が上手のようだった。
「ああもういい…。席に座ってろ!」
バスジャック犯は気がついていないが、FBIの女性のおかげでこれで拳銃1つが無効化された。だが、問題はここからだった。バスジャック犯の隙を伺っていたのは、何も彼女だけではなかったのだ。前方にいたコナンがゴソゴソとしだしたのだ。