第12章 新たな転校生は波乱の幕開け
「おい、バス会社に連絡しろ…!!」
もう1人の男が警察に先日逮捕された宝石強盗グループの主犯を解放することを要求する。そこで私は最近のニュースを思い出す。ふむ……この男達は宝石強盗グループの一味か。ニュースであっていた犯人の顔写真を思い出しながら、目の前の強盗グループの1人を見る。
「おい、早く出せ」
そうしている間に、どうやら携帯を回収している男がとうとう最後尾まで来てしまったようだ。ところが、隣に座っているクソ親父は携帯を出す素振りさえ見せない。苛立ちが募る男は、クソ親父を小突いた。
「おい!早く出せ!」
「あ、すみません…。携帯、持ってないんですよ…」
いかにもという咳をするクソ親父に私は呆れ返った。うっわ…嘘下手。心の中でツッコミをいれて思わず笑いそうになったが、バスジャック犯が私の方へ視線を向けたため私は慌てて恐怖の色に染まる顔を演じる。
「ちっ、そこのガキは!!」
さて、クソ親父が上手くもない嘘をつくので、幼い子の私がそれを利用しない手はない。クソ親父に擦り寄るように、私は彼の腕に隠れた。そして、震えた声で…
「も…持ってないよ…」
と言う。男は私たち2人を交互に見て舌打ちをすると、携帯が入った袋を持ち今度は隣のへと声をかける。
「…………」
それを横目で見ていた私は、安堵してクソ親父から手を離した。一瞬だったが、腕をつかんだ時クソ親父がピクっと体が動いた気がしたのだ。私の脳裏で投げ飛ばされた過去の記憶が蘇り、いつ来るかと冷や汗が止まらなかった。だが、相変わらずクソ親父に隠れるように体は小さくしていたのだった。