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赤井さんちの一人娘

第12章 新たな転校生は波乱の幕開け


危うく…と表現した通り、寝起きの私が座席から落ちることはなかった。正確には、落ちる前に誰かに支えられたと言った方が正しい。私の体を支えたのは2つの逞しい腕…

「あ、ありがとう……げっ」

私はその人を見て、思わず顔を顰める。記憶より髪が短くなり、マスクで顔が隠れているが…見間違えようのない相手が私を見ている。その眼光の鋭さ、一般人では決してない気配…。思わず唇を閉じ、口唇を動かさないように質問を投げかける。

「……………なんでいんの…?」

それは肝心な時に本国に帰っていた…クソ親父本人だった。クソ親父は私を座席に座らせると、質問にも答えず視線を前へ向ける。

「大人しくしろ!!!!」

クソ親父の視線の先には、スキージャケットにゴーグルまで着用している不審な二人組の男達がいた。その男達の手には拳銃が握られており、彼らがバスジャックをしていることは誰の目から見ても明らか。自分のことより、あっちを気にしろ…ということだろう。ってか、バスジャックってことは……

「…………えー…」

思わず落胆の声が漏れる。バスがジャックされたということは…スキー行けないじゃん…。私は自分の中の楽しみが音を立てて崩れるのが分かった。男たちは乗客を脅すために1発発砲する。それに驚いた乗客達が悲鳴を上げると、男は躊躇なく再度発砲した。シンとした車内に、男は笑いながら乗客の携帯を回収していく。…確かに、実弾入りの銃を所持しているのなら、スキーよりも今はこっちに意識を向けるのが懸命だろう。それに、男達が脅しのために実弾を使ったのは、間違いなく…

「………牽制…か…」

バスジャック犯の行動としては最適だが、私はそれよりも隣のクソ親父の動向の方が気になる。こいつは何の目的でここにいるのか…それに周りを見れば、見覚えのあるFBIの女性もいるではないか。えぇ…怖い…FBIが2人も乗っているバスって何…? そんなバスに乗り合わせたバスジャック犯に、心底同情した。
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