第12章 新たな転校生は波乱の幕開け
「楽しみだね!!スキー」
きゃっきゃっとはしゃぐ歩ちゃん。私は微笑みながら、江戸川くんの後からバスに乗り込む。どこに座ろうか悩んでいると、灰原と目が合う。顔色があまり良くないが、スキーをして大丈夫なのだろうか…。私は彼女に微笑んで軽く手を振るが、灰原からは無視されてしまった。ちょっとしょんぼり。
「おい、灰原! お前、なんでそんなになずなを…………」
「…………………私の勝手でしょ」
ボソボソと小さい声で話す2人。んー…嫌われたなこれは。まぁ、彼らに罪悪感がないわけでもないので、私は気を使って、
「お兄さん、灰原さん気分が悪いみたいだから、気をつけてあげてね」
と言って、コナンが頷いたのを確認してから、灰原から1番遠い席である一番後ろへと座ろうとする。もちろん大きく欠伸をするふりをするのも忘れずに。私はこちらをちらりと見るコナンに一言。
「着いたら起こして。私ちょっと眠くなってきちゃった」
「あ、あぁ…。ったく、お前もお前でほんとマイペースだな」
灰原の態度に普段通り気にしていない様子の私に、呆れた声を出すコナン。私はそのまま寝た振りをすることに決めた。
スキーなんてしたことなかったし、楽しみではあった。だが、私は帰ってからのジンの態度が恐ろしくて仕方がない。今日私が荷物を持って出る時も、ジンは不機嫌そうにタバコとお酒を口にし、私に睨みをきかせてたし…。そんな日に限って、朝からいるし…あぁ…少し憂鬱。早くスキー場につかないかなぁ…だが、バスは発車時間までしばらくあるらしい。そろそろ本格的に眠そうだ…。
「…?…」
微睡んでいると、ふと、隣のシートに誰かが座ったような気がした。だけど、私は特に隣を見ることなくそのままウトウトとしていた。窓際だと言うのに、暖かくふわふわと気持ちいい寝心地…最近ジンに叩き起されることが多かった私にとって、久々の安眠だった。
「騒ぐな!騒ぐとぶっ殺すぞ‼︎」
だが、私の短い安眠タイムは終わりを告げる。和気あいあいとしたバスの雰囲気に合わない声が響き渡ったからだ。私はその声でビクッと体を震わせ、危うく座席から落ちそうになった。