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赤井さんちの一人娘

第12章 新たな転校生は波乱の幕開け


その日のジンは最高に苛ついていた。上の人から小言でも言われたのだろうが、ジンは人に指図されることを嫌う。彼が自由でいられるのは、一重にその能力が買われているからだ。

「…ジンが見つけられないなら、私に見つかるはずないよ…」
「ならここで殺す」

私が死ぬか、それともシェリーを見つけるかの二択のようだ。…さぁ、どうしよう…ここで灰原哀の名前を出すのは簡単だ。だが、そうなれば必然と工藤新一の名前が浮上し、そこから江戸川コナンに行くことは間違いないのでそれは避けたい。しかし、死ぬのは嫌だ。ふと、私の中である考えが浮かんだ。

「分かった。なら、この件は私に任せてよ」

私の言葉は苛立ちを煽りジンはボトルの酒を一気に飲む。そして、ギロりと私を睨んだ。

「テメェ…今の言葉忘れるんじゃねぇぞ」
「もちろん。その代わり…私のお願い一つ聞いてよ」

私の言葉にピクっと反応を示すジン。しばらく沈黙が流れ、彼から了承の言葉が出ると私は心の中でガッツポーズを取る。

「だが…」

私が隙を許した一瞬…その一瞬に私は喉を捕まれ、勢いよく押し倒される。カヒュ…という僅かな空気が漏れる。

「だが、出来なかったら…テメェが俺に従う番だ」

彼にしては意外な言い回しだと思った。私が彼に表面上従わなかったことなどないというのに…。だが、ジンの有無を言わせない様子に私は頷く。すると解放され、私は大きく息を肺の中へと入れた。

「最近のテメェは自由に動き回りすぎだ。キティの名を貰ったからと言って、テメェは俺の所有物なことには変わりねぇんだよ」

何をそんなに分かりきったことを…そう言おうにも、口から出たのはカスカスの言葉にならない声だけ。ジンが私に顔を近づける。

「テメェは死ぬ気でシェリーを探せ。いいか…今の仕事が終わる前に探し出せ」

つまり、残り期間は短いということか。それならば、説得のために空けておいた時間はその作戦タイムに使わなければならない。

「…あ、ジン」

部屋を出る前、私は振り向いた。なんだ…とばかりにこちらを見るジンから察するに、私に当たったおかげで機嫌は良くなったようだ。私はそんな彼に一言。

「ご飯、ちゃんと食べてね。じゃあ、おやすみなさい」

そして、私は部屋を後にした。ちょうどクソ親父にこの間の借りをどう返してもらうか…考えていたところだった。
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