第12章 新たな転校生は波乱の幕開け
~誰かside~
彼女を見た瞬間…自分でも苛立つのが分かった。最初はこんな子供に秘密を負わせるだなんてという憤りだと思っていたが…
「あれ? 灰原さん、顔が真っ青だよ…?」
教室に戻る手前…私は自分の体が震えているのが分かった。そして、彼女が近づき、私の額にその手が触れた瞬間…苛立ちの理由が分かった。
「触らないで…!!!!」
小さな手を振り払った瞬間…私は気づいた。この憤りは恐怖から来ているものなのだと。私は震える体を隠すようにその場に座り込んだ。
「おいっ、灰原!!」
彼女の軽い体はいとも簡単に倒れ、私の声に何事か…と周りの人も集まってくる。
「あ、ごめん…びっくりさせちゃったね」
泣くかと思った彼女は特に気にした様子もなく…私に近づき覗き込む。その途端…再度恐怖が私を襲い…私は江戸川くんの腕を掴んだ。
「来ないでっ!!!」
私の声に驚いたように目を丸くする彼女と、怪訝そうに私を見る江戸川くん。すると、生徒たちの間をくぐり抜け、教員が現れる。
「ど、どうしたの!! なんの騒ぎ…!!」
教員からしてみれば異様な光景だろう…。怯えて男児生徒に縋る私の目の前には、害のない屈託のない笑みを浮かべる女児生徒がいるのだから。
「私がいけないんです!!」
突如彼女が立ち上がり、教員にそう告げた。目を丸くする教員に、彼女は言葉を続けた。
「私、初めてあった転校生とお友達になりたくって…でも、灰原さんの気持ちを考えずに質問沢山しちゃって…多分怖がらせちゃったみたいで…」
ごめんなさい…そう彼女は私に頭を下げた。江戸川くんがそれに乗っかるように、私に言う。
「…許してやったら? 悪気はないんだってよ」
これ以上、視線を感じるのが嫌だったので私もそれに乗っかる。すると、彼女は目を輝かせて、教室の方へと指を指した。
「よかった!! じゃあ、教室に戻ろっか!! 先生、廊下で騒いでしまってごめんなさい!!」
ペコッと綺麗なお辞儀をして、彼女はスタスタと教室へと歩みを進めた。江戸川くんもそれに続き、私に小声で話しかけた。
「……急にどうしたんだよ…」
だけど、私は彼の問いには答えることが出来なかった。自分でも信じられなかったから…まさか…
あの歳の子が黒の組織の匂いをさせているだなんて…笑えない冗談だと…そう思いたかった。