第3章 悪の組織
私は首根っこを掴まれて投げられた。このまま地面に激突かと思いきや、ウォッカが見事私をキャッチしてくれた。
「ア、アニキ?」
「これを使う。あいつにはガキが一匹いたよなぁ? 丁度これくらいの」
ニヤリと笑う男に私は心底ゾッとした。慌てて私は彼に下ろしてくれるようお願いした。
「行くぞ」
やっと下に降りれたと思ったら、再び男に体を持ち上げられ、私はその部屋を後にした。………私の扱い雑だなあ…。楽だしいいけど。でも、少しウォッカの視線が気になる。
「おい」
不意に男と目が合った。
「初仕事をくれてやる。絶対に声を出すな。言われた通りにしろ。じゃなきゃ、殺す」
何をさせるのかよく分からなかったが、私は何度も頷いた。男はそれを見ると、どこかの部屋の扉を開けた。
「…ぐ…あ……」
中にいたのは、比較的若い男の人。身体中、捕虜の兵士みたいに傷だらけなその人は椅子に縄で縛り付けていたし、さらに目隠しもしてあった。
「………だ…れだ……」
今にもかき消えてしまいそうな声。男は答えた。冷ややかな声で
「よお。会いに来てやったぜ」
「っ!? ジ……ジン…」
明らかに怯えているその男の人。へー、この人ジンっていうんだ。ジンは私をウォッカに渡し、自分はソファーに座りタバコの火をつけた。ウォッカは私をその人の膝の上に乗せた。
「なっ、なんだ!?」
男の人は突然のことに驚いた様子だった。かく言う私も、よくわからない展開に焦っていた。だが、声を出すなと言われていたので、慌ててその口を閉じた。
「なんだと思う?てめぇがよく知ってるガキさ」
ウォッカがニヤリと笑う。私は首をかしげた。私、この人と初対面なんだけど…??しかし、男の人はその言葉になにか思い当たる節があるらしく、途端に慌て始めた。慌てすぎて私、膝から落ちそう。
「ま…まさか……いや!そんなはずは……」
「あまりはしゃぐと、娘が落ちちまうなぁ」
「っ!?!?!?」
ウォッカの言葉で私はなんとなく察することが出来た。つまり、私はこの人の娘…という設定らしい。男の人は私の方に顔を向けた。
「何故ここに!?お前は母さんと一緒に保護されてるはずじゃ……」
「保護ということは、てめぇが情報を漏らした相手は、その権限を持つサツ関係ってことだな」
ビクッと身体を震わせる男の人。図星をつかれたようだ。