第3章 悪の組織
「た…頼む……娘は関係な……」
「関係あるかどうかは決めるのは俺だ」
そう圧をかけていくじんと、私は目が合った。ジンは何かしらの合図を私に出し、そして相手の同様に心底楽しそうに目を細めた。
「口を割った方が身のためだぜ。アニキは女子供にも容赦ねぇからな」
ウォッカが顔を近づけながら言う。男が迷っている…あと一歩というところだろう。私は彼の首に手を回した。まるで親に甘える子供のように。場の雰囲気を感じ取り、不安を表すように。助けを求めるように。
「………あ……」
男の人は私には分からない言葉で、何かを言った。娘の名前だろうか。私はそれに応えるように回した手に力を込める。
「どこに何の情報を漏らした?」
「娘を…娘を……」
「情報が先だ。俺は気が短ぇんだ。ガキの頭に風穴空けられたくなければさっさと言え」
ジンがにやりと笑った。男は完全に私を娘だと思っている。私は少し彼に悪い気がしたが、まぁ仕方がないのだろう。弱肉強食の世界はいつも理不尽なのだ。
「え、FBIだ!FBIに情報を渡した。今度の日本での仕事についてだ。それだけだ!!頼む…娘は…娘だけは……」
FBI?私は何か頭に引っかかり、首を傾げた。………どこかで聞いたかはたまた見たのか…、何故か覚えがある。
「…詳しく話せ」
「詳しいことは知らない! ただ、日本ででかい取引きがあるってことだけだ!!!」
「…もういい」
舌打ちをし、ジンは銃口をこちらに向けた。私は慌てて膝から降りる。ギリギリだった。
「行くぞ。もうここには用はねぇ」
ジンは機嫌が悪そうだ。早足で部屋を出る。ウォッカと私は慌ててその後ろをついて行った。