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赤井さんちの一人娘

第3章 悪の組織


夢の中。目の前にいるのは、小さい私。3年くらい前…かな。多分。

あの頃の私は生きるために必死だった。必死で毎日を生き延びていた。盗みは当然、追い剥ぎもしたし、毎日周りの人間が死んでいった。あまりの空腹にゴミやネズミも食べたこともあった。……よく生きてたなぁ。

そんな懐かしくも、もうあんな生活は送りたくないなぁと思いながら、私は目を開けた。見知らぬ部屋。………………………どこ?ここ。服も昨日とは違う。それに………

「……起きたらどけ」

私はむくりと起き上がった。……どうやら私はこの人の膝の上で寝ていたらしい。覚えてないけど、一応謝った。男は私を見て、お酒を口に含んだ。灰皿には多くのタバコの吸殻が。私は考えるより先に口が出た。

「……お酒とタバコ、一緒にすると体悪いよ」

「あ?」

言って後悔した時はもう遅い。鋭い眼光で睨まれてしまった。…これはまた銃を向けられるな。

「ちっ」

しかし、男は意外にも私の忠告を聞き入れてくれた。吸いかけのタバコを灰皿に潰す。私は笑ってしまった。少し、あのヘビースモーカーのクソ親父と被ったところがあったからかもしれない。

「…何笑ってやがる」

またあの眼光に睨まれるのは嫌なので、慌ててソファーから降りようとしたが、サイズの合わない服を踏んでしまい、ころんっと転がってしまった。…男の膝の上に。男の硬い筋肉質の太ももが頬に当たる。ちらりと男を見た。怒っているか…と思ったが、男は別段気に止める様子もなく、お酒を飲んでいる。

「………私の服は?」

「ウォッカに聞け」

ウォッカ?誰だろ…。そう思っていたら、部屋の扉が開いた。そこから入ってきたのは、多分あの運転席にいた人。

「アニキ、ネズミが目を覚ましやした…………す、すいやせん!!! 今どかせます!!」

「いい。続けろウォッカ」

あぁ、この人がウォッカ。私は納得して、起き上がろうとしたが、

「…口を割らねぇか」

ウォッカから何かを聞いた男は、苛立ちを露わにしてグラスを壁に叩きつけた。私は勢い振り回された腕を辛うじて避け、ホッと息をついた。

「へ、へい。どうしやすか? バラします?」

「…………いや」

私をちらりと見て、男は笑った。……………すごく嫌な予感がする。
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