第12章 新たな転校生は波乱の幕開け
「………………」
私は無言で立っている…目の前の少女にへらっと笑いかけた。
「…あー…こいつは…その…」
私と彼女を交互に見ながら、そうコナンは言葉を濁した。
「………貴方が七種なずなさん?」
茶髪の綺麗な顔立ちの少女だと思った。誰かに瓜二つだな…とも。だが、誰が気づくだろうか…この少女が今組織が血眼になって探している…宮野志保だということに。私は動揺を悟られないように、大きく頷いた。
「そう!! 貴方は灰原哀さんだよね。先週転校してきた。私、忌引で休んでて…」
嘘だ。先週はいきなり学校に電話がかかり、祖父が亡くなったとかで組織に連れ戻されたのだ。それから、私は彼女を探すために必死で情報を集めて……そしてなんの手がかりも得られないまま今に至っていた。そんな彼女が今、私と同じ背丈で目の前にいる。
「…知ってる。確か…おじい様が亡くなられたのかしら? ご愁傷さまね」
「そう。まぁ、1回も会ったことのない人だったんだけどね」
しかし、クールという言葉が良く似合う少女だと思った。楽しそうに笑うクラスメートの子たちと比べると、それこそこっち側の人間だと嫌でも分かる。そんな彼女は今…皆の注目の的だった。
「貴方は…どこまで知っているのかしら…?」
そんな彼女だったが、別に気にする様子もなく言葉を続ける。その意味が自分たちの体のことだと気づき、コナンが焦ったように耳打ちをする。
「お前…何言ってるんだ…!!」
私は困ったように眉を下げた。そして、コナンと灰原の腕を掴んで走り出した。
「ちょっ…!!」
臆したように体を震わせる灰原だったが、私は構わず2人を人気のないところに連れ出した。
「お前、急にどうしたんだ!!」
「だって、貴方が言ったんじゃない。こんな子供に秘密がバレてるって。冗談じゃないわ。このくらいの子供は秘密なんて守れないものよ。この子の口から組織にバレでもしたら…!!」
……なるほど…やはり宮野志保は新薬を飲んで、体が縮んでしまったようだった。