第11章 江戸川コナンとの対立
~誰かside~
「いた、蘭姉ちゃんあそこ!!!!」
広田雅美の姿を見つけたのは、とある港だった。大きな汽笛の音があたりに響き渡った後の出来事だった。俺たちの前で広田雅美は倒れ込み、血溜まりがあたりに染みる。
「しっかりして!!」
声をかける蘭とは違い、俺は側に落ちている拳銃に目が留まる。俺は蘭に救急車を呼び、小五郎達にも連絡するように言う。蘭の姿が消えた後、彼女を抱えると女性にしては重みと厚さを感じる。……これは……防弾チョッキ…? 状況から考え込む俺に彼女は口を開いた。
「ボウヤは確か探偵事務所にいた子だったわよね…どうしてここがわかったの?」
と尋ねる彼女に、俺は偶然腕時計に発信機をつけてしまった事、そして10億円を持ち去るところを見ていたと説明する。
「あ、あなたはいったい!?」
「江戸川…いや…工藤新一…探偵さ!!」
俺の言葉に彼女は目を見開き、そして自嘲気味に笑った。
「計画は完璧だったのにみんな死んじゃったわ…そ、してこの私も組織の手にかかって…」
彼女の言葉に俺はあの黒ずくめの男たちの姿が過ぎった。
「組織・・・?」
「謎に包まれた大きな組織よ・・・ま、末端の私にわかっているのは組織のカラーがブラックって事だけ・・・」
彼女の言葉に、この事件の背景に自分を小さくした男達が関わっていると確信する。
「最後のお願い…10億円の入ったスーツケースは奴らの手に渡った…。でも、もう1人の仲間は病院にいる…。お願い…組織より先に彼を保護して…」
俺が頷いたのを確認すると、安堵したように広田雅美は笑った。
「頼んだわよ…小さな探偵…さ…」
と言い残して目を閉じた。呼吸を確認すると、彼女はかすかにだが息をしていた。俺は先程から俺たちの会話を聞いていた、後ろに隠れている気配に向かって、話しかけた。
「…このお姉さんを助けにきたんだよね…? もうすぐ警察が来るけど……絶対にこのお姉さんを死なせないでね」
今俺ができるのはここまでだ。そして、俺はサイレンの方に向かって走り出した。お姉さんの最後のお願いを叶えるために…