第11章 江戸川コナンとの対立
約束の日。私は緊張から大きく息を吐いた。ジンの目の前で彼を欺く…そんなことができるのかという思いと、やりきらないと私が死ぬという恐怖が混じる。だけど、彼の前で恐怖は死を意味する…約束の時間までもう少し…そして時間とともに発信機の位置がこちらに近づいてきた。
「ご苦労だったな、広田雅美…いや…宮野明美よ…」
私はジンたちのすぐ近くに待機している。ふと、ジンが確認するように私を見た。どうやら、薬で死ぬ予定だった奴が死に損ねて病院へと運ばれたようだ。…はいはい、病院の名前も彼の場所も把握済みだって…あとでちゃんと始末しますよ…そんな仕草を返すと、ジンはそんなやり取りが無かったかのように口を開いた。
「それが組織のやり方だ…」
そして、彼は金を渡すよう要求する。だが、宮野明美は組織の言いなりにはならないとばかりに口を開く。
「その前に妹よ!! 約束したはずよ! この仕事が終わったら、私と妹を組織から抜けさせてくれるって…あの子をここへ連れてこれば、金のありかを教えるわ…」
あーあ…彼女の予想通りの言葉に、私は手元の無線を取り出す。予防としてスコッチに動かせておいてよかった。彼の返事を待つ間にも話が進んでいく…。
「フ…そいつはできねー相談だ。奴は、組織の中でも有数の頭脳だからな…」
驚いた様子の宮野明美に、私は心底同情した。彼女は自分が身を置く組織について何も分かっていなかったようだった。相手は人を殺すことになんとも思っていないような組織…彼女と交わした約束も鼻っから守る気などないのだ。
「奴はお前と違って組織に必要な人間なんだよ」
ジンはそう言うと、彼女に銃口を向ける。
「最後のチャンスだ…金のありかをいえ…」