第11章 江戸川コナンとの対立
~誰かside~
七種なずなは謎多い少女である。転校したばかりのクラス内で、俺はそう聞かされる。
「なずなはよ、放課後遊びに行けねぇくらい家のお手伝いで忙しいんだとよ」
元太がつまらなそうにそう言い、
「でもなずなちゃん、頭良いよ!! 歩美、この間算数教えてもらっちゃった!!」
歩美はそう嬉しそうに言い、
「それに七種さんは運動神経もいいですよ!! 性格も穏やかで優しいですし」
光彦も歩美の言葉を付け加えるように言う。だが、周りの子の意見は違っていた。
「でも…ぼんやりしてる時もあるよね…。なんだか少し怖くなっちゃう…。どこか行っちゃいそうで…」
「あと、遊びに誘っても来ない時もあるよな。付き合い悪ぃよ」
そんな彼女だからなのか…1回俺は先生から相談されたことがあった。何か彼女について変わったことがあれば教えて欲しい、と。
「あのね、なずなちゃん…お父さんとお母さんと早くにお別れしちゃっていて、今親戚と住んでいるのよ。だけど、その親戚と最近上手くいってないんじゃないかって話があって…電話しても出ないし…面談をしようにもなずなちゃんから忙しいからって断られるし…」
ふと、江戸川コナンになった時の彼女の憂う顔がちらついた。そうか…なずなはそんな複雑な事情を抱えていたのかと知る。歳に対して、どこか大人びた考え方や表情をするのもそれが理由か…と妙に納得する自分がいた。
「お兄さん? ぼんやりしてどうしたの?」
俺の顔を覗き込むようにして話しかける、少し高い視線のなずな。俺が工藤新一だと知る小さな共有者。微笑む彼女の頭を、何でもねぇよと言いながら乱暴に撫でる。
「お兄さん、今日もおじさんのお手伝い? あまり危ないことしないでよ。心配だなぁ」
俺はお前が心配だ、その言葉を言う前に、彼女はいつもの道で大きく手を振る。走る小さな背中に、何か手助けができたらいい…そう思うのは何も俺だけでは無いはずだ。