第9章 スコッチと幹部昇進
「…………おっ、帰ったのか?」
私はぐったりとして、部屋へと戻った。夜も更ける時刻だというのに、スコッチはコップを片手にヒラヒラと手を振っていた。
「……スコッチ、寝れないの?」
「疲れた顔してんな。なんか飲むか?」
私の問いに答えず、スコッチが私にホットミルクを作るために台所へと立った。彼はお酒を飲んでいたようだ。この匂いは…確かライ。無意識に眉間に皺が寄る。
「ほい。まぁ、お疲れさん。ジンのやつも気がたってんだろ。気にすんな」
どうやら用意してくれていたようで、すぐにホットミルクが私の前に現れる。私はお礼を言うとそれを飲み干した。普通ならジンが寝た後、そのまま一緒に寝るのだが、気になることがあり今回は部屋に戻ったのだ。それは、この男がちゃんと寝ているか確かめるため。
「おいおい。そんなに一気に飲みしたら舌を火傷するぞ」
舌に鈍い痛みを残したが、コップが空になったことを確認すると、私は酒瓶に手を伸ばすスコッチの手を掴んだ。
「後片付けはやっておくから、スコッチはおやすみ」
そう言うと、スコッチの手を引きベッドまで連れていく。スコッチは困った顔をするが、特に抵抗することなくベッドで横になった。
「あの時の夢?」
私も隣で横になると、スコッチは苦笑をこぼした。私は彼のお腹を軽く叩く。彼の不安も分かる。味方だと信じて疑わなかった相手からの裏切り行為。その裏切りは不信感へとなり、そして今やバーボンすらも疑いの対象となっている。つまり、心の拠り所がないのだ。
「……大丈夫…」
スコッチの手をぎゅっと握ると、弱々しい笑みを零す。私は手を強く握った。
「……大丈夫。大丈夫だよ。心配ないから…私が守ってあげる」
スコッチの青白い頬に手を当て、微笑むとスコッチはハッと目を開いた。