第9章 スコッチと幹部昇進
~誰かside~
俺が寝れていないことを、なずなは気づいていたようだ。悪夢で飛び起きてしまう俺が酒を飲んでいると、今日もジンのところで泊まるはずのなずなが帰ってきた。
「寝れないの?」
やっぱり…という口調だったので、俺はやはり勘がいいなと密かに苦笑していた。幹部の仕事から学校まで…大変なのはなずなの方なのに、彼女は俺の身まで案じてくれる。ゼロのことだってそうだ。俺は今疑心暗鬼に陥っており、幼なじみのあいつのことさえ疑っているのだ。……あいつは連絡を取ろうとしてくれているのに。
「気にしないで、スコッチの気持ちに整理がついてからでいいんだよ」
ふふっと微笑み、俺の頭を優しく撫でるなずな。それが堪らなく愛しく、俺はたまらず彼女を抱きしめた。
「よしよし。怖かったね。スコッチ、大丈夫。ゆっくりおやすみ」
2回りも違う子にこのようなことをする日がくるなんて誰が想像できようか…。ゼロには叱られてしまうだろうが、俺は不思議とこの感情に身を任せられた。
「誰だって死ぬのは恐ろしいもの。どんな屈強な人だって、死ぬ時は泣きわめくものだよ」
何人もそういう人を見てきた。そう彼女は声も出さず泣く俺の頭を抱きしめた。
「スコッチが生きててよかった」
そして、散々泣き疲れた俺は、赤ん坊のように少女の腕の中で眠りにつくのだった。