第9章 スコッチと幹部昇進
「美味しかったな!!」
私は洗い物をしてくれているスコッチの言葉に頷き、写真へと目を移した。その写真はジンが投げ込んできたという仕事…もとい面倒な後処理だ。
「………クソ親父の交友関係の一掃…ねぇ…」
面倒だし、何より気が進まない。私は写真を机に置いた。宮野明美…クソ親父を組織に招き入れた女。純朴そうな雰囲気な彼女は、クソ親父が付き合いのあった女の誰とも似ていない。………組織に入るために利用したのか…。その彼女を裏切り者を出した制裁として、利用して殺すのだそう。
「…………ジンとウォッカが見張り役か。よっぽど腹が立っていたんだなぁ」
クソ親父が憎まれるのはいつものことだ。私はもう1枚の写真を見る。
「おっ!! 凄く美人な子だなぁ」
洗い物が終わったらしいスコッチが私の手元をのぞき込む。私はうんと頷く。もう1枚の写真は、宮野明美の妹であり研究員の宮野志保。姉とは違い、鋭い瞳を持っていた。
「………二人きりの姉妹…気が進まないなぁ…」
そもそも、クソ親父が身バレしている時点で、宮野明美は海外にトンズラしてそうなものだ。だが、こうやって私に仕事が回ってきたということは、彼女はその申し出を断ったのだろう。宮野志保…唯一の肉親である彼女のために。
「……俺がやろうか?」
スコッチが写真をちらりと見ながらそう言うので、私は首を振る。まだ期限が先なので、ギリギリまで先延ばしをするつもりだった。その時、私の携帯から見知らぬ番号で着信が入った。