第9章 スコッチと幹部昇進
~誰かside~
終わった…と俺は思った。NOCだとバレ、ライに追われている時、俺は死ぬんだと。覚悟も決めていた。
「っ!?」
突然、俺の前に車が止まる。助手席が開き、身構えた俺だったが思わずその人物を見て目を開く。
「乗って!!」
組織に処分されたと思っていたなずなが俺の手を引き、後部座席へと押し込む。さらに、俺は車に乗っていた人物に驚きの声をあげる。
「べ…ベルモ…っ!!」
「大丈夫だから乗って!!」
慌てて降りようとしたが、なずなにグイッと後ろから押され車内へと入る。俺の隣にはなずな、彼女の前に向き合うように座っているのはベルモット、運転席にいるのはカルバドスだろうか…。俺は恐怖で固まっていた。無意識に携帯が入っているポケットを触っていると、震える手を誰かが掴む。隣を見るとなずなが俺に笑いかけていた。
「逃げる必要はないわよ。疑いは晴れたから」
ベルモットが俺に写真を投げる。そこには、知らない男が写っていた。そして、その次の写真を見た瞬間、俺は驚愕した。
「匿名でスコッチがNOCだという情報が入ったんだけど、信憑性がないって組織は判断した」
その男に見覚えは?と聞かれ、俺は首を振った。ベルモットはそう…と言うと、グラスにお酒を注ぐ。
「通報してきたその男、警察庁の人間なんだけどね。調べたら、この周辺に警察官が多く配備されてたの」
だから、密告は罠なんじゃないかって思って。なずなは俺の手をぎゅっと握った。
「疑わし者は罰せよ…それがジンの方針よ。キティに感謝するのね」
助……かったのか…。俺は戸惑いながらなずなを見る。どうやら、この子が小さな身体で俺を助けてくれたようだ。だが、俺は自分の体が震えるのが分かる。匿名のタレコミをしたこの男…俺は見覚えがあった。この写真が本当なら…俺は警察の人間に殺されそうになったということになる…。
「それでどうするの? キティ」
「このままアジトに戻る。スコッチ、しばらく私の部屋にいてもらうけどいい?」
「あ…ああ……」
組織名、キティ。最近、幹部に成り上がった1人。まさかとは思っていたが……なずなだったとは…。俺はふぅっと息を吐く。隣を見れば、なずながスコッチと初おとまりとはしゃいでいた。