第9章 スコッチと幹部昇進
「なずなが幹部…!? 本当ですかい兄貴!!」
まだ状況を把握しきれていないウォッカが、ジンにそう尋ねる。すると、ジンが舌打ちわし、長年の付き合いがあるウォッカはそれが本当だと知る。
「NOCの情報…ベルモットのお姉さんにも頼んでおいたの。そのおかげで手っ取り早く、害虫駆除できたでしょ?」
ここでジンの嫌いなお姉さんの名を出すのは、危ない橋だと分かってはいたがどうせ私が言わなくても耳に入っているだろう。それを言われる前に先手を打つ。
「つまり、俺の他にも情報を漏らしたんだな」
ギラっと向けられた眼光に、体が震えそうになったが私はぐっと抑えた。ここが私の死の分岐点だ…恐れなど死ぬ気で隠せ。
「うん。だって、ジン最近寝れてなかったし。これ以上仕事増えたら、死人みたいになっちゃう」
にこやかに…あくまでも私はジンだけのことを考える犬…そんな顔を精一杯した。ゆっくり…ゆっくりとジンに足を踏み出し、手が触れる距離まで近づく。そして、大きく腕を広げた。
「これで、ジンと過ごせる時間が増えるよね?」
ふふっと笑い、相変わらず銃口をこちらに向けたままのジンに抱きついた。私の体温を奪っていくジンの体…よくこんなんで生きていけるよなぁ。そんなことを思いながら私は口を開く。
「私、役に立ったでしょ? これからも貴方の犬でいさせてよ」
と。結果、作戦は成功。ジンは私を殺さず、私は幹部となり、"キティ"という名前を与えられた。これにより、私は延命と引替えに…これからも命を危機に晒していくという代償を得たのだった。