第9章 スコッチと幹部昇進
私が身を置く、黒の組織。そこで、一番手っ取り早い信頼の取り方を私はずっと探していた。そして、それをやっと見つけたのはつい先日のこと。
「ネズミを探せ」
ある時、機嫌がすこぶる悪いジンがそう電話でウォッカに言っているのを耳にしたのだ。ネズミ……黒の組織と敵対する組織からのスパイのことだと私はすぐに気づいた。ここ最近のジンの仕事は、ネズミによって邪魔された仕事の後始末だった。そのため、苛立ちが募っていたことは誰の目から見ても明らかだった。
「NOC…ねぇ…」
私はNOCの情報はすぐに手に入れることができた。何故なら、私は知っていたからだ。
バーボン、スコッチ、この両名はNOCだということを。
最初はこの情報をどう利用するか迷った。すぐにジンに報告するのは、赤子の手をひねるように簡単だ。だが、この2人は私がこの組織から抜け出すのに必要な人材。易々と渡す訳にはいかなかった。それこそ、私が死に直面したとき以外は。
「……………ほんと…よく生きてたよなぁ」
私は誰もいない屋上でくすくすと笑う。ゴロンっと横になると、雲が右から左に流れていた。
クソ親父に邪魔されて任務に失敗した私は、ジンのところへと連れていかれた。殺される……そう思った私に、ジンは銃を向けた。そして、苛立ちを隠せないというように私にこう告げた。
「テメェ…… 俺に隠してることはねぇか」
どうやら、私が張っていた予防線にネタばらしの前に気づいたようだ。間に合ったか…と私は顔に出さないように安堵した。ジンの言葉の意味に気づかないウォッカが慌てて私を見る。
「うん、あるよ」
私はやっときづいたの?とジンに微笑んだ。私の挑発にジンからピリッと肌を刺す空気が流れ、私の隣にいたウォッカがビクッと肩を震わせた。私は構わず口を開く。
「電話が来たんでしょ? いつもジンに仕事を与える人たちから……私を幹部にしろって」