第7章 殺しの任務
「な……んで……」
私は突然の事で、頭がごちゃごちゃになった。クソ親父はあの時より髪が伸びていたが、それ以外は何も変わっていなかった。そのとき、ターゲットのうめき声が聞こえ、私はチラリと落ちている銃を見た。その直後、目の前に大きな影が私に覆いかぶさった。顔を上げると、殺気立った顔のクソ親父の姿が。私の体が震えるのが分かる。冷や汗が出てくる。その時だった。再びうめき声が聞こえ、ドサッと何かが倒れる音が聞こえた。それはターゲットがいた方向だった。…………あぁ…自殺したのか…。私はそう思った。任務失敗…。私はジンに殺されるだろう。だが……なんとなく諦めがついた。
「…………」
クソ親父は何も言わず落ちている私の銃を取ると、くるりと後ろを向けた。
「………あ………」
私はその姿が………最後に家を出た時と重なり、思わず手を伸ばしかけた。
「待って……おと……さ……」
だが、扉が開く音がし、ドタドタと足音を立てて現れたのは、ウォッカだった。その耳にはイヤフォンが見えることから、恐らくイヤフォンの先にはジンがいるのだろう。
「ライ!てめぇ何してやがる!!」
頬が腫れている私と自殺したターゲットを見て、ウォッカはクソ親父に怒鳴り声を上げた。……あぁ…ライはクソ親父だったのか…。こんなにも近くにいたのに、私はあんなに必死になって探して……。でも、もうそれも終わりか…。私は立ち上がった。
「私が悪いの」
ウォッカが私を見る。私は彼に笑いかけた。
「私がライの邪魔をしたの。射撃の直線上に私がいたから、ターゲットの動きを封じることが出来なかった。それに、私がしくじっちゃってターゲット自殺しちゃったし……。情報とかあんまり聞き出せなかった」
だから、私が悪いの。そう私は言い、歩き出した。
「ウォッカ。ジンの所に連れて行って。…ターゲット自殺で、任務失敗…そう報告しなきゃ」
屋上から出る時、息を乱したバーボンたちとすれ違った。私の表情から任務失敗だと察したのだろう。私は彼らに笑いかけた。
「…ごめんね」
そう口にしながら。