第7章 殺しの任務
「…アクシデントばかり起こるな」
気をつけろと私に小声でいい、バーボンは奥のゲストルームに姿を消した。スコッチが心配そうにこちらを見たので、私は笑いながら手を振る。
「お母さん、君を置いてどこかへ行っちゃったね」
私はため息をつきそうになった。振り返れば、やはりあの男だった。私は年相応に微笑んだ。
「用があるみたい。でも、すぐパパが来る……」
「お父さん? 先程、車で帰られたようだけど」
私は男を見た。男は笑みを浮かべたまま、私を上から下まで見ていた。……まさか、私がウォッカと一緒にいたところから見ていたとは思わなかった。ウォッカは無事目的のものを手に入れて、この場を去っている。この男の言うことに間違いはなかった。
「………ぱぱは…忙しいから…でも、ままが…………」
「お母さんは、ゲストルームに男を探しに行った。君を見ただろう?君はご両親に捨られたんだ」
………なるほど。これがこの男のやり口か。私は動揺しているふりをし、顔を下へと向けた。そんな私に男は優しい声色で、私の方に手を置いた。
「大丈夫。僕は君の味方だよ。もしかしたら、途中で気づいて戻ってくるかもしれない。それまで……あっちで待っていようか?」
私の手を取り、どこかへ連れていこうとする男。私はため息をつきそうになったが、もう片方の手を掴まれなくてよかったと思った。その手には、体の自由を効かなくする薬があった。