第7章 殺しの任務
私は深呼吸をして、中へと入った。私の隣に立つのは、ウォッカ。いつもしているサングラスを取り正装したその姿は、少し緊張した面持ちだった。
「今回、お前は俺の娘として潜入する。俺は…海外の社長。俺は例のブツを落札。お前はターゲットの殺し…ふぅっ!」
……かなり緊張しているようだ。私は笑って、彼の腕を組んだ。
「大丈夫だよパパ。きっと落札できるって。ままに喜んでもらおう!」
「あっ、ああ」
………かなりガチガチだ。私は彼の腕を引き、ボーイが持っているお酒を取り渡した。
「リラックスだよ。パパならできる」
一気にお酒を口に入れると、少しは落ち着いたようだ。ウォッカは少し申し訳なさそうに私を見る。…大丈夫だよ。私は彼に微笑み、そして会場へと入るウォッカと別れた。
「こんにちは、可愛いお嬢さん」
その瞬間に、身なりの整った20代の男が私に声をかける。…子供がいても誰も何も思わないなんて言ったの…誰だっけ…??ジンだ。
「私のことですか?」
私は無理やり笑顔を作り、そう言った。すると、男は頷き、私にオレンジジュースを渡した。
「ここにはお父さんと来たのかい?」
私はそれを受け取りながらも、その飲み物に嫌な感じしかしなかったので、それに口を付けることはしなかった。私は曖昧に頷きながら、あたりの様子を伺った。…ターゲットはまだいないようだった。
「そのワンピース似合ってるね。お母さんと選んだのかい。黒い髪がよく映える」
不意に触ってこられ、私はずいっとオレンジジュースを押し付けた。そして微笑む。
「ごめんなさい。知らない人とお話ししたら、ままに怒られるの」
そして、もっと良く見える場所へと向かった。後ろではじっとりした目線を隠しもしない男が、私を見て笑っているのを背で感じながら。