第7章 殺しの任務
~別side~
「どうしたの?」
私の服やっぱりおかしい?と、正装したなずなが俺にそう聞いた。俺は慌てて首を振り、降谷を視線を感じながら車のドアを開けた。
「どうぞ、お姫様」
あまりにも似合ってたから驚いてただけだ…そう褒めると、恥ずかしそうに笑いながら、なずなは車に入り込んだ。入る時にちらりと二の腕が見え、俺は少し顔を曇らせた。……こんなににも華奢な体に、おぞましい機械が埋め込まれているだなんて……
「スコッチ」
バーボンが車に乗り込む前、俺の方を見た。俺はその真っ直ぐな視線に何を言いたいのか察し頷いた。数日前の会話が頭を過ぎった。
「保護は無理だ」
俺の上司も降谷の上司も、この案件に関しては手を出さないという姿勢を取ると判断した。どれだけ講義をしても、聞き入れてもらえなかったが、それでも俺たちは諦められず、今度はなずなを呼び出し説得に応じた。
「俺達のどちらかがあたかも君が殺したように、ターゲットを殺す」
と。しかし、彼女は首を振った。俺たちの計画の穴という穴を突きつけて。最後にはこう締めくくった。
「私にはGPSが埋め込まれてるんだよ。下手な行動をしたら即殺される。成功するには、強力な後ろ盾と、綿密な計画…それになんと言っても均一のとれた連携が必要になる。そのためには、何度もシュミレーションしなきゃならない。……ただでさえ、私は勝手な行動を取って、ジンの傍から離れられないのに、無理だよ…」
淡々と大人顔負けのことを言う彼女に、俺は冷静にもこの子の判断力に舌を巻いてしまった。……この子はこうやって今まで生きてきたのだ…と思わず考えてしまう。誰にも頼れず、誰も信用せず…そして唯一信用をみせてくれた俺たちはそれを彼女にそれを返せないでいる。俺たちはこれ以上の歯がゆさを知らなかった。
「まま、スコッチ、私のためにありがとう!」
そして、彼女は項垂れる俺たちを思いっきり抱きしめた。そして、俺たちの耳元でそっと囁いたのだ。
「…ジンがNOCの存在を疑い始めてるから、手柄を上げたいなら気に止めといたがいいよ」
私のことなんかよりもさっと言い、なずなは部屋を出ていった。…あの子は…どこまで感ずいてるのだろう…。公安が動けない理由。それは、すでに何人かのNOCが見破られ、始末されていることが原因であった。