第1章 Episode of 跡部①
ちょっとくらいいいじゃんかー…
少しの反抗心から、折り返したスカートをほんの少しだけ長くして、手鏡を出して自分の顔を見ると、チークの部分を少しだけ擦って、校門に向かってあっかんべーをして校舎へ向かった。
持ってきた上履きに履き替えて、まず職員室を探さなくっちゃ…
どうせなら柊さんにきいとけばよかったなー
綺麗な校舎は無駄に広い。
一体何万人生徒がいるんだろうって思うくらい。
キョロキョロしながら歩いていると、
ドンッ
「わっ」
「きゃっ」
誰かにぶつかってしまった。
頭から相手の胸に突っ込んでしまったけど、どうやら私の肩を支えてくれたようで、転んでしまうことは免れた。
「うわ!ご、ごめん!」
「よそ見しとったら危ないで?お嬢さん。」
丸眼鏡に肩まで伸びたサラサラ髪の関西弁の男子生徒が苦笑しながら言う。
「ごめんね。ぼんやりしちゃってた」
慌てて体制を立て直すと、その男子生徒は私の肩をポンポンと叩き、にっこり微笑んだ。
「お嬢さん転校生か?新顔やな」
「う、うん。今日から転校してきたの」
「ほんまか。職員室探してるんか?」
そう。この学校広いねー。全然わかんないよ、と苦笑すると
「ほんなら俺が案内するわ。お嬢さん、名前は?」
「あ、私、」
「ちゃんか。可愛い名前やな。俺は忍足侑士。よろしゅう」
忍足くんが手を差し出してくれたので、私もその手を握り返す。
すぐに職員室へ案内してくれたおかげで、先生との顔合わせもスムーズに済ませることができた。
どうやら忍足くんは同じクラスのようで、
肘と膝の傷も、保健室で処置をしてもらってからクラスに来るようにってことで、保健室まで忍足くんが更に案内してくれることになった。
朝の跡部ってやつにしろ、柊って副会長にしろ、嫌な感じのやつに出会ってばかりで初めて出会った優しい人と同じクラスになれて、ホッと胸をなでおろした。
「ちゃんって呼んでええか?」
廊下を歩きながら忍足くんがきく。
「うん、いいよ?呼んで?」
「ほな俺のことも名前で呼んでくれるか?」
「えっと…侑士…?」
名前を呼ぶと、よく出来ました と頭をポンポンされた。