第8章 体育祭、その前日譚
「なんだ、緑谷!告白か!?」
「こくはっ……!?ち、違う!違うから上鳴君!」
「女子と二人っきりでお話だとぉ!?代われ緑谷ぁ!!!」
全力で上鳴君と峰田君に絡まれている緑谷君にはドンマイとしか言いようがない。あれは、解放されるにはちょっとかかりそうだ。さっさと帰りたいオーラを出しながら不機嫌になっている焦凍に、先に帰っててと伝える。
「いや、待ってる。」
「早く帰りたかったんでしょ?どれくらいかかっちゃうかもわからないし……」
「少しくらい構わない。」
どうやら、意地でも待つつもりらしい。帰る気満々だったのに、席に座って“待ってる”と全身でアピールしてくる!ずっと左を使ってないことからよくわかる通り、一度でもこうだと決めたら焦凍は梃子でも動かない。仕方ない、とりあえず緑谷君の答えがどちらだったとしても今日はお話だけで終わらせておこう。
「えーっと、お話あるなら私達先帰っちゃうねデク君。」
「そうだな、邪魔をしてはいけない。また明日だ、緑谷君!」
なるほど、いつも三人で仲良くしてるなぁと思ってたけど、帰りも一緒だったらしい。未だに絡まれたままの緑谷君にそう言って、麗日さんがドアを開けた。そうしたら、とんでもない人数が教室の前に集まっていた。
「な、な、な……何事だぁー!?」
まさか、ドアを開けたら人混みがあるとは想像すらしていなかった麗日さんが声を上げる。当然、緑谷君に絡んでいた上鳴君や峰田君はもちろん、教室の奥にいた皆の視線が教室の入り口に集まる。これだけの人数がA組に集まるなんて理由はたった一つしかない。体育祭の件だ。私達と同じように、今日体育祭についてアナウンスされたのなら私達のクラスが気になるのも仕方のないこと。ただ、だからって教室の前を塞がれてしまうのは嫌だけども。
「君達、A組に何か用か?」
「なんだよ、出れねーじゃん!何しに来たんだよ!」
「敵情視察だろ、ザコ。ヴィランの襲撃を耐え抜いた連中だもんなぁ。体育祭の前に見ておきてぇんだろ。」