第8章 体育祭、その前日譚
No.1ヒーロー・オールマイトにお昼に誘われた……!それ、だいぶすごいことだって緑谷君は意識してるのかな。それとも、そういう意識がないくらいにオールマイトと関わりがあったりする?ちょっとしたスクープを見た気分で緑谷君をじっと穴が開くほど見つめる。流石にそこまで来たら自分が何を言ったのかを把握したのか、いつものように大慌てしながら両腕で変なポーズをとりながら顔を隠す。
「あっ、いやっ、その、こ、個性が似てるから色々教えてもらってるんだ!ほら、僕まだ上手く使いこなせてないからっ。」
「あー……そうだね。緑谷君、個性使うとどこかしら壊しちゃってるよね。体育祭もあるし、それだと困るよね。」
確かに、あれだけバキボキ身体壊してたら先生も気にするか。前のUSJではオールマイトの目の前で壊してるし。自分を救ける為に、調節できない個性でヴィランに立ち向かった生徒。しかも、自分の個性と似た所がある。更に、体育祭も近い。……うん、これはアドバイスもしてあげたくなる。教師としてはダメダメだけどね、オールマイト!
でも、体育祭か。全員が熱を上げ、プロヒーローにも注目される体育祭は焦凍にとってエンデヴァーさんに反抗するまたとないチャンス。……体育祭までの時間は二週間。……あんまり余裕はない。ないけど、このチャンスは生かす他にはない、か。緑谷君には申し訳ないけれど、私の……いや、焦凍の為に利用させてもらうよ。
一瞬だけ迷い、覚悟を決めて緑谷君を見る。不思議そうに私を見つめる緑谷君と目を合わせて私はさっき考えた事を緑谷君に提案する。
「ねぇ。緑谷君の個性を使う練習、協力しようか?私の個性を使えば身体が壊れない程度の力がどれくらいかを把握することができるかも。」
「至情さんの個性を?至情さんの個性は、そういえば“エネルギー操作”だってオールマイトに言ってたっけ。……あのとんでもないスピードは、運動エネルギーの操作で?“エネルギー操作”……言葉通りなら、身体の強化は生命エネルギーの操作か。なら、筋肉の増強もできちゃうのか?いや、できるんだろう。それで筋力を徐々に上げれば……ブツブツブツ……」