第8章 体育祭、その前日譚
「「「相澤先生、復帰はえぇええ!?!?」」」
あまりにも早すぎる復帰に何人かが叫ぶ。だって、顔とか腕とか色々折れてたんだよね!?めちゃくちゃ重症だったよね!?表情筋がボイコットしている焦凍がぽかんと口開けて驚いてるなんて、超レアだよ先生!?
「先生!無事だったのですね!」
「いや、無事言うんかなアレ……」
飯田君が相変わらずロボットのような動きで喜びを表現してるけど、包帯ぐるぐる巻きだよ?麗日さんの言う通り、無事とはとても言い難いんじゃない?むしろ、無理やり病院から出てきたんじゃないの?この人。
「俺の安否はどうでもいい。なにより、まだ戦いは終わってねぇ。」
相澤先生の“戦い”という言葉でクラスに緊張が走る。まさか、またヴィランがこの学校のどこかに襲撃を企んでいる?リーダーの男はスナイプによる狙撃で両腕両足が撃たれていたと思ったんだけど……ヴィラン側にも治癒個性持ちがいるってことかな。ワープといい、なんて厄介な――
「――雄英体育祭が迫ってる。」
……ヴィランじゃないんかい!
ヴィラン関係ではなく、学校行事だとわかった皆はお祭り騒ぎ――にはならずに、困惑の表情で相澤先生を見つめる。まぁ、ヴィランの襲撃を受けたばかりなのに体育祭をやるって、大丈夫なのか気になるよね。勿論、相澤先生も私達のその疑問は予想済み。“逆に開催することで、雄英の危機管理体制は盤石であることを示す為”と私達に説明してくれた。
「なにより、雄英の体育祭は最大のチャンス。ヴィラン如きで中止していい催しじゃねぇ。」
「いや、そこは中止しよ……?体育の祭りだよ?」
USJでの襲撃を思い出してか、震える声でそう訴える峰田君。まぁ、普通はそういう反応を取ったりするんだろうけれど……忘れちゃいけない。ここは、“Plus Ultra”を謳う雄英。トラウマなんて乗り越えて行けって言うに決まってる。それに、雄英体育祭は昔でいうオリンピックに並ぶ催し。超人社会となった今、個性なしでのスポーツ競技は形骸化してしまった。それと入れ替わるように人気が出たのは、個性ありのスポーツ。中でもトップクラスの人材が集まる雄英の体育祭は最も盛り上がりを見せる。日本中の人が、プロヒーローが、注目する体育祭。その中には、当然トップヒーロー達もいる。これを中止してしまうのは雄英や生徒達にとって痛手になる。