第7章 襲撃、ヴィラン連合!
「これが、トップの力……。」
圧倒的な力を目の当たりにして、焦凍がぽつりと零す。左を否定し、右だけでトップを目指す焦凍が越えようとしているものがそこにはあったから。でも……焦凍、きっと右だけじゃ勝てない。それぐらい、私達とオールマイトの実力はあまりにも違い過ぎた。
いつか、あの力に叶うくらい強くなれるだろうか。ああ、でも私や焦凍には何か大切なものが欠けている。太陽のように輝くオールマイトを見ていると、ひしひしとそれを感じてしまう。だけど、何が足りないんだろう。何が欠けているんだろう。わからない。皆がオールマイトを焦がれる目で見つめているのを、私はじりじりと心がくすんでいくような気持ちで眺めていた。
「やはり衰えた。全盛期なら5発も打てば十分だったのに……300発も打ってしまった。」
オールマイトの力に衰えが?雄英に教師として就任したのにはそういう理由が?衰えたといっても、対オールマイトのヴィランを吹き飛ばすだけの力があるのだから本当にすごい。現に、ヴィランもオールマイトの圧倒的な力を見てうろたえている。私達が出る幕はもうないと判断して、他の皆の救援に行こうと切島君が緑谷君に声をかける。けれど、どうしてか緑谷君はオールマイトをじっと見たまま動こうとしない。
「緑谷君?」
「っ、し、至情さん……」
動かない緑谷君に近づいて肩に触れる。びくりと反応を示し、私の声に答えてくれはするけどやっぱりその目はオールマイトに釘付けだ。それに……身体が、酷く震えている。何か様子がおかしい。
「奏!周りの連中が起き上がってきた。突破して他の奴らを救出しに行くぞ。」
焦凍の声を聞いて後ろを振り向くと、倒れていたはずのヴィラン達の何人かが意識を取り戻して立ち上がっている。オールマイトの邪魔にならないように、蹴散らして他の皆の所へ行かないと。そう思って、緑谷君の肩から手を離した。その時、緑谷君が飛んでいくのを風で感じた。
「緑谷君!?だめっ!」
オールマイトを襲おうとした主犯格の二人へと緑谷君が殴りかかりに行ってしまった。まさか、あの震えは主犯格に立ち向かうための勇気を振り絞っていたから?オールマイトを、救けようとしたから?とにかく、彼が飛んでいってしまったのは私が手を離してしまったせいだ!