第2章 入試試験
雄英に関しては送ってもらったパンフレットを見てるから、少しくらいは知ってる。とんでもなく広い敷地内にはトップクラスの施設がぎゅぎゅっと詰め込まれてて、様々な状況下での訓練を行えることが売りのひとつ。それだけの施設が詰まってるものだから、移動もバスを使ったりするとか書いてあったはず。うん、知識としては知っていたとも。でも、写真で見るのと実物を見るのとでは印象って変わるよね。
「めちゃくちゃでかい……」
雄英の最寄駅から歩いて十数分、どこから眺めてもH型に見えるガラス張りの大きい校舎をゲートの前から眺める。大企業もびっくりするんじゃないかってぐらい立派なビルが校舎なんて、とんでもないマンモス校。流石ヒーロー科以外にサポート科、経営科、普通科を抱えてるだけはある。かばんのポケットからスマホを取り出して時間を確認する。8時40分、大体予定通りの時間。そのままスマホの電源を落として、他の受験者の後に続くように見た目よりも機能を重視した武骨なゲートをくぐった。
「どけ、デク! 俺の前に立つな。」
酷く荒々しい声が前方から聞こえてくる。金髪のつんつん頭がぼさぼさな緑頭の子に当たり散らして去って行くのが目に入った。こそこそと周りから聞こえてくる声を聞くに、彼はヘドロ事件の爆豪っていう人らしい。事件のことはちらっとニュースを見ただけで詳しくは知らない。けど、多分ヒーロー科志望だよね? それにしてはちょっとあんまりにも過ぎると思うんだけど。当たり散らされた子なんかは胸に手を当ててため息を吐いてる。ヤンキーみたいな子だったし、あんなの誰だって怖いよね。どんまい、と心の中でエールを送りつつ私は試験会場目指して3つもある昇降口のうちひとつに入っていった。
――
試験の説明会場は1万人くらいが座れそうな巨大ホールで行われるようで、埋めつくさんばかりの受験生達が座っている。列に貼られた受験番号に従い指定された席に着いて、机に置かれたプリントに目を通す。まずは実技試験があり、その後に筆記試験があるらしい。実技内容は敵《ヴィラン》との戦闘を想定した市街演習。実技は戦闘かな? と予想はしてたけど、なるほどロボットが相手。今まで訓練してきた成果がだせると逸る気持ちが止められない。私に戦闘狂な面があったことにちょっとだけ驚いているとホールの明かりが落とされる。