第2章 入試試験
これ以上この話を続けようとしても、きっと焦凍は聞いちゃくれない。だから焦凍の言う通りにちゃんと前を向いて歩く。私が受ける予定の雄英高校までは電車を使いはするもののそんなには遠くないし、家から最寄の駅まではたったの10分くらい。つまり、話していたらすぐに着くわけで。目の前には私と同じ年頃の子達が沢山いて、皆それぞれ緊張した顔つきをしている。
「俺はここまでだな。」
「うん。送ってくれてありがとね、焦凍。」
離された手に名残惜しさを感じる暇もない間に背中を強く押される。いきなりのことで躓いて転けそうになるのを堪え、一言文句を言ってやろうと後ろを向いた。けど、そんな気持ちが吹き飛ぶくらい優しい顔と瞳が私に向いている。
「奏。雄英で待ってる。」
「うん。焦凍の隣は、私のだから。待ってて。」
焦凍は優秀なヒーローの卵で、推薦入学も勝ち取ってる。倍率も偏差値も高い学校の一般入試。当然のように壁は高い。でも、推薦入学者の隣に立とうっていうのに他の受験者に負けているようじゃダメだよね。主席をもぎ取ってく気概でいなきゃ!
自信たっぷりに手を振って改札を通る。後ろは見ずに、そのままホームまで足は止めない。だって、もう走り込みに行ってるだろうから。その信頼が心地いいよ、焦凍。