第7章 襲撃、ヴィラン連合!
ヴィランの己の身体を顧みない凶行、そして自分の個性で人体を壊した恐怖で焦凍の顔が驚愕に染まるのをこの目で見た。見てしまった。放っておけなくて、オールマイトの後ろを走って焦凍の手を握りに行く。掴んだ手は個性のせいか、それとも緊張のせいかとても冷たい。
「っ、奏……」
「大丈夫、大丈夫だから……」
そっと握り返された手に安心しながら、脳無と呼ばれたヴィランを注視する。砕けた部位が盛り上がり、そして一気に身体に残っていた氷を破って筋肉の塊が手足を形成していく。なんというか行動といい、個性といい、とても人間には見えないヴィランの姿に冷や汗が流れていく。
「なんだ、その個性は……!“ショック吸収”じゃあないのか!」
「別にそれだけとは言ってないだろ?これは“超再生”だな。」
個性の、複数持ち!?焦凍や私のように、複合個性で二つの個性を持っているように見える人はいる。けれど、普通の人は個性を複数持つことはありえない。驚く私達に向かって、リーダーは自慢げにこの脳無がオールマイトの100%に耐えられるように作った改造ヴィランであることを告げる。人体実験まで行っているなんて……ほんと、とんでもない相手が襲撃してきちゃったものだ。
「まずは出入口の奪還だ。脳無。」
脳無が通常のヴィランじゃないことは誰もが認識した。だから、誰も脳無、もしくは狙われた爆豪君から目を逸らさなかった。けれど、この場にいたどれだけの人が脳無の姿を追えただろう。私は、見えた。見えたのに、反応できなかった。
一瞬の空白の後、轟音が響き渡る。脳無によって振り抜かれた腕による風圧は、直接振るわれたわけじゃない私達まで吹っ飛ばす。身体の軽い私はとんでもなく吹き飛ばされそうになったけど、焦凍と手を繋いでいたお蔭で大事には至らずに済んだ。けど、私の体重を支えることになった焦凍の腕は大丈夫なのか。
「焦凍!腕大丈夫!?」
「平気だ、それより爆豪は!?」
黒い霧のヴィランの傍にいるのは、脳無だ。爆豪君の姿はない。なら、まさか――
「か、かっちゃん!」
緑谷君が悲痛な声を上げて隣を見て――更に驚きの声を上げた。
「かっちゃん!?避けたの?凄いね!?」
「違ぇ、黙れカス。」
「爆豪?なら、あれは……!」