第7章 襲撃、ヴィラン連合!
「うおぉおおおお!」
「奏!」
私の背後、埋もれたビルの影から飛び出してきたヴィラン。一瞬でヴィランを凍らせた焦凍を狙わず、後ろでただ立っているだけの私を狙うのはまぁ良しとする。けれども、不意打ちを狙っているのなら音を立てた時点で失格だし、大声だしながら襲っている時点で論外だ。
私を叩き潰さんと迫るモーニングスターは、片足を一歩引いて半身を下げるだけで簡単に狙いが外れる。身体中を使って振り下ろされた一撃は地面を叩きつけ、そして私の目の前に無防備な項を晒す。後はその首に手刀を叩き入れてあげれば、気絶したヴィランの出来上がり。この程度、”人魚姫”を使うまでもない。焦凍も、何を心配しているのか……。
「……奏。」
「私だって戦えるって言った。」
「……そうだよな。わりぃ。」
「まったくだよ。これでも焦凍の相棒のつもりだったんだけど?」
「……ああ。悪かった。」
少し気まずそうに目線を逸らす焦凍を見て、ほんのちょっとだけ許すことを決める。全く、ずーっと一緒にエンデヴァーさんの修行を受けてきたのに、あんな程度のヴィランにやられるって思われるなんて!今度手合わせする時は、お腹に一発入れることを心に決めた。反省はしているようなのでちょっとは許すけど、まだ怒っているのは変わりないからね!
「で、これからどうするの?」
「ああ、そうだったな。」
私の方に振り向いていた焦凍が、ゆっくりと氷漬けのヴィランに視線を戻し、私に向けていた優しげな声とは違う低くて怖い声で話しかける。
「なぁ。このままじゃ、あんたらじわじわと身体が壊死していく訳なんだが――俺もヒーロー志望。そんなひでぇことはなるべく避けたい。」
強調されるように言われた“なるべく”は、ヴィラン達に最悪の未来を想像させるには十分だったらしい。悪人とは思えない程に顔を青ざめさせ、じわりと涙だって浮かべてしまっている。そして、それでもまだ足りないとばかりに焦凍は冷気を手に纏わせながら顔のすぐ前にかざしてみせる。