第7章 襲撃、ヴィラン連合!
焦凍の背中に遮られた風がびゅうびゅうと激しい音を奏でている。とにかく、焦凍と立ち位置を交換しようともがく。でも私の筋力じゃ動くこともできずに、焦凍に完封される。このままじゃ、守られてしまう。
「どうして……」
どうして焦凍は私を庇っているの?違う、焦凍は優しい人だから、私じゃなくてもきっとこうしている。そう、焦凍は優しいから咄嗟に庇っちゃっただけだよ。だから、きっとこの行動に深い意味なんてない。ああ、でも、きっと、こういうのを人は“無償の愛”って呼ぶのかな。一瞬でも、私の為に怪我を負うのを良しとしたのかな。私のせいで怪我をされるのは嫌。だけど、もしそう思ってくれたのであれば。私という存在を大切に思ってくれたのであれば――これ以上嬉しいことなんて、ない。
そろりと伸ばした手が焦凍の背中に触れる。じんわりと冷え切った指先に焦凍の体温が伝わってくるのを感じる。ほぅと息を吐いた途端、感じる浮遊感。焦凍の肩越しに見えたのは、ぽっかりと穴が空いたように見える黒い霧で作られた穴と施設の天井。天井は、高台で見た時よりも随分近い。どうやら、私達はかなり高い位置から落とされてしまっているらしい。
「ちっ、飛ばされたか。」
「焦凍、着地は任せて。」
「頼む。」
背中に回していた手から人魚姫を呼び出す。核石からエネルギーが勢いよく失われていく感覚と共に現れた人魚姫に“落下速度を落とせ”と指示を出す。天井を見ていたからよくわかっていなかったけど、かなりのスピードが出ていたらしい。急激に緩まったスピードで、一瞬酔いそうになる。でも、そのお蔭で衝撃も特に来ないまま地面へ降りることには成功した。
「わりぃ、助かった。」
「え、あっ、うん。」
まだ抱きしめられたままだった私を焦凍がそっと離す。ちょっと名残惜しくも感じてしまうけど、素直にそのまま離れて周りを確認する。視界に入ってくるのは土と埋もれたビルの山。そして、辺りにはクラスメイトの姿は見えない。脱出を目指すか、合流を目指すか。どちらにせよ、ここから動かないと始まらない。それに、庇おうとしてくれた焦凍にお礼すら言えてないや。声をかけようとした時、土を踏みしめる音が辺りから近づいてくる。音はバラバラで、何人もの人がゆっくりと近づいてきているような音。