第6章 人騒がせなマスコミ
魚の切り身を適当なサイズにお箸で切る。その切れ端を焦凍のお皿へ移そうとした時、そういえばざる蕎麦だったっけと焦凍のトレーの上を見て気がついた。流石にざるの上に置くのはちょっとあれだし、私のお皿を焦凍の方へと指先で軽く押す。そのお皿を自分の方へと引き寄せて、一口サイズの切れ端をぱくりと口に運んだ。
「……ん、うまい。」
「でしょ?これはごはんが進んじゃうよねぇ。」
「奏も蕎麦食うか?」
「いいよ、また今度お蕎麦頼んでみる。」
「そうか。」
つゆの中にお蕎麦をひとつまみ分いれてそのまま差しだしてくる焦凍を止めて、のんびりとしたお昼を楽しむ。ほんとは、八百万さんに入れたのかを確認するつもりだった。でも、確認を取るだけのはずなのに、どうしてか口に出せない。
ぼんやり考えながら最後の一口をぱくりと食べた瞬間、大音量の警報が鳴り響く。驚きのあまり、ろくに噛みもせずにご飯がごっくんと喉を通っていく。喉!水!と、目を白黒させている内にアナウンスも鳴り響く。
『セキュリティー3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください。』
入学式を含めて私達がこの雄英にいるのはたったの三日。当然ながらセキュリティー3がなんなのかわからない。ただ、この警報とアナウンスを聞いた隣の生徒が慌てて席を立って、非常口のかかった出口の方へと駆けていく。それは、他の生徒達も変わらない。あっという間に私達の周りには誰もいなくなっていく。
食堂を埋め尽くすほどの生徒達が狭い出口に向かって走ったらどうなるか。当然のように出入口は渋滞し、避難ができないと分かった生徒達は怯えてパニックに陥る。出口に続く列は太く、そして乱暴になってまるで満員電車のようになりつつあった。
「うっわー……ひどいね、皆パニックになってる。」
「ああ。あれに突っ込むのは危険だな。」
「パニックをなんとかしたいけど……先生の追加アナウンスでもないと無理だよね。」
「ああ。止めてぇのもわかるが、やめとけ。その内先生のアナウンスでも流れるだろ。」